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書評家 石井千湖 氏 読者と作家をつなげる書評家の仕事
石井千湖 氏

1973年生まれ。早稲田大学卒業後、新卒で八重洲ブックセンターに入社。その後、ブックストア談浜松町店、セブンアンドワイ(現セブンネットショッピング)と合計8年間書店勤務。書店勤務中に培った確かな鑑識眼と文章力で注目の若手書評家。現在「an・an」「MORE」「ELLE」「日経ウーマン」「週刊金曜日」などの数々の雑誌媒体で文芸を中心とした書評や著者インタビューなどを担当している。年間365冊以上の本を読む傍ら、映画美学校主催の「批評家養成ギブス」の講師も勤めている。

毎日、200冊以上の新刊が刊行されるという書籍。数多ある書籍から自分が読みたい一冊を探すのは一苦労だ。そんな時に、本との出会いを作ってくれるきっかけのひとつが書評である。本の魅力を的確な文章で表現する書評家とは、一体どんな仕事なのだろうか。書評家がどのように本を選び、書評を書いているのかを知りたくなり、若手書評家として注目されている石井千湖氏にお話しを伺った。

書評家になるきっかけは8年間の書店勤務

現在、書評家として数々の雑誌の書評を執筆している石井さんですが、書評家になろうと思ったきっかけを教えてください。

最初から「書評家になりたい!」という思いがあってなったわけではないんです。もともと本は好きで、学生時代は島田荘司さんに影響を受けてミステリーものを読みあさっていました。なので、就職するなら本にかかわる仕事がしたいなと思って、出版社、取次、書店に片っ端から応募したんです。で、唯一内定をいただけた八重洲ブックセンターに入社しました。それから結婚などで2回転職をするんですけど、すべて書店ばかりで働いていて、気がつけば約8年間本と共に働く生活を送っていました。その間に講談社が刊行している文庫情報誌「IN★POCKET」で書店員がオススメする本の紹介コーナーの原稿依頼があったんです。それは交代で書店員が執筆していたのですが、たぶん順番で私に回ってきたのでしょうね。それが初めて自分が書評らしいものを書いた体験だったんです。それまでPOPは書いていましたけど、長文を書いたことはなかったのでかなり苦労しました。本の紹介文を書くことの難しさをその時、実感しましたね。

ちなみにどのような本を紹介されたんですか?

中島らもさんの『今夜、すべてのバーで』です。書店勤務中は小説や文庫などの文芸コーナーを一番長く担当していたので、結構いろんなジャンルの小説を読んでたんです。けれど、特に物書きになりたかったわけではないので、今思うと書評というよりもただの感想文でしたけれど。

それがきっかけで書評を書くようになられたんでしょうか?

いえ、今でこそ書店員が、カリスマ書店員とか本の目利きとして本を紹介するコーナーは当たり前ですが、当時はほとんどなかったのでそれっきりでした。ですが、ネット書店に転職して著者インタビューをまかされたことが書評家になる足がかりとなりました。初期のネット書店って、本を買ってもらうための情報コンテンツを充実させようとしていたんですよ。そこで自分で企画を立ててライターさんにインタビューしてもらうという、編集者みたいなことをしてました。その時点ではまだ自分が書いているわけではなかったんですが、上司から「石井さんは自分で書かないの?」と言われて、それから物書きということを意識し始めたんです。で、ネット書店を退職した後に時間もできたので、たまたま見つけた「書評の愉悦ブックレビュー」という書評家の豊崎由美さんが講師を務める書評講座に通い始めたのが、書評家の道に進む第一歩となりました。

批評と書評のちがいとは?

豊崎由美さんが講師とは、かなり鍛えられそうですね。

いや~、だいぶ鍛えられましたよ。この講座は豊崎さんが一方的に教える講座ではなくて、実践を中心とした講座でしたから。講座内容は無記名で自分が書いた原稿をクラスのみんなで講評しあうというものだったんです。無記名なので、結構辛辣な意見を忌憚なく言われたりして盛り上がりました。実際、自分の文章についての感想を他人から聞く機会ってめったにないわけじゃないですか。それが良かったですね。特に豊崎さんは、我欲が強い文章に厳しかったんです。文章を書きたい人っていうのは、私も含めて自己顕示欲が強いところがあるので、強引に自分の得意分野にもっていったり、本よりも自分の頭がいいことをひけらかしたりする文章になってしまいがちなんです。豊崎さんはそうした一人よがりの文章には厳しかった。その時、書評って自分に寄り添うのではなく、本に寄り添わなければいけないということを徹底的に叩き込まれましたね。

本に寄り添うとは具体的にどういうことなんですか。

よく豊崎さんがおっしゃっていたのは、「批評の場合はその本を読み終えた人にとって面白い発見がなくてはいけないけれど、書評はまだ本を読んでいない人に向けて書かれたものだ」と。だから、書評を読んだ人がその本を読みたくなるような仕掛けが必要なんですね。あらすじひとつとっても、どこを切りとるかで印象が変わる。あらすじ自体も一種の書評なんです。しかも、内容を逸脱してはダメで、正確に内容を伝えなければなりません。そのためにも本の魅力がどこにあるのかを、じっくり読んで細かく分析する必要があるんですね。けれど、そこで注意しなくてはいけないのが、本の肝になる部分は明かせないってことなんです。肝の部分は、読者にゆだねてそれ以外のところで本の魅力を伝えなければいけない。そこが書評の難しいところですね。

編集者が本の帯文を書く行為と少し似ていますね。

そうかもしれません。帯文もうまい付け方をする編集者っていますよね。「本文のここを引っ張ってくるぁ!」って唸る帯文をよく見かけます。書評も同様で800字前後で書き切ることが多く、そんなに文章量があるわけではないんです。ですから、この本の最大の魅力、面白いところはどこにあるのかを見極めて端的に書かなければならないんです。そのためにも私が書評を書く場合は、最低2回以上は作品を読むようにしています。私は、特に小説の書評を書くことが多いので、初めは、読者としてフラットに読んで、その作品を通じて見えてくる世界観を捉えるようにしています。小説は世界観こそが重要ですから。その後ですね、細かく分析するのは。2回目以降で、面白いポイントを抽出していくんです。たとえばキャラクターが魅力的であれば、どのように魅力的なのかを言葉にしたり、文章表現がうまいのであれば、本文から抜粋したりします。

となると、面白いポイントがたくさんある作品は逆に書評は難しそうですね。

そうなんです。面白い作品ですと、全部紹介したくなっちゃうので正直絞り込むのが大変です。けれど、全部盛りこんでしまったら散漫な文章になってしまいますよね。なので、面白いポイントは厳選するように心がけています。

その面白いポイントを厳選する方法は?

書評が掲載される媒体に合わせています。その媒体の読者を想像して、この読者だったら、どこを一番面白がるかな? ということを常に考えて書くようにしています。たとえば、「MORE」であれば“乙女”っていうキャッチが誌面によく出てきますから、乙女的女子の読者像を具体的にイメージするんです。あと、以前「週刊現代」に書評を依頼された時は、作品中のエロティックなシーンを盛り込んでみたりしました。ヌードグラビアがよく載っている雑誌なので(笑)。要するに書評はただ内容を紹介すればいいというわけではなく、媒体の特性をつかむことが大切です。そしてその媒体の読者が“思わず読みたくなる” ような面白いポイントを盛りこんでいくんです。ですから、掲載される媒体もよく読み込まなければなりませんね。

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