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取材力「情報収集とインタビューの技術」

「視点・行動力・五感」


杉田 はじめまして。扶桑社の杉田と申します。よろしくお願いします。
 簡単に私のプロフィールをお話ししたいと思います。23歳のときにシンコー・ミュージックという音楽出版社に入り、それから編集プロダクションを3年ほど経験しました。そのあと1988年に創刊する「週刊SPA!」に、創刊3カ月前に入って約10年、編集スタッフからデスク、副編、編集長を経験しました。その後ちょっと編集を離れまして、販売、電子書籍等々も経験し、そしてまた今、書籍の編集をしております。
 出版の仕事をしてほぼ40年ぐらいになります。今からお話しすることは、編集プロダクション、週刊誌、そして書籍というものを経験した私の体験をもとにしています。ここにいらっしゃる方々は当然、私が経験していないいろいろなものを作られている方ですので、私がお話することは、私が経験して培ったものにすぎません。ですから、きょうお話しする中で一つぐらい持って帰っていただけるものがあればいいかな、という感じでお話しさせていただきます。もし引っ掛かるものがあったら嬉しい、そんなスタンスで聞いてもらえればと思います。
 「価値ある情報を得るために」がきょうのテーマになっています。「価値ある情報」とは何かというと、皆さんはプロフェッショナルなので、皆さんが提供する情報に読者が「お金を払ってもいいな」と思うようなものであると思っております。
 きょうはお話しするにあたって二つあります。一つは、価値ある情報とはなんぞや。それを得るためにはどうすればいいのか。それと後半では、情報というのは、多くは人が持っているものですから、人から情報を得るためのインタビュー方法の基礎。その二つをお話しさせてもらえればと思っております。
 まず、価値のある情報を得る方法についてです。情報といえば、今はインターネットなくしてはあり得ない話なので、やはりインターネットの話からしなければいけないかと思っております。インターネットを使うときに必ずしなければいけないことがあります。皆さん、ご存じですよね。「検索」です。
取材対象が明確であればインターネットほど便利なものはありません。私はネットがない時代には図書館に行ったり大宅文庫に行ったりして調べていました。大宅文庫って分かる方います? 少ないねえ。大宅文庫は、雑誌などを集めて図書館にしたものです。雑誌図書館。当時はいつもそこに資料を探しに行っていました。
 それが革命的なインターネットができて、机の前に座って検索をすれば大概のものは見られる。まして今はGoogle、Twitter、Facebook、Instagram、いっぱいあります。このネットからどういうふうに情報を取ってくるかは、若い皆さんのほうが断然、技術を持っていますので、ここで私が説明しても仕方がないと思います。ただ、インターネットというのはいいことばかりではなく、そうではないものもある。一応私なりにインターネットの特性を四つ挙げてみました。もう皆さんご存じだと思います。
①情報が膨大である
インターネットが出始めてちょっとぐらいのときに全世界で10億サイトあると言われていました。今はもうそれどころではなく数えきれないぐらいほどある。これは皆さんご存じのとおりです。
②情報はすべて過去のものである(情報は文字によって固定される)
これは養老孟司さんがおっしゃっていたのですが、文字として書かれたものはすべて書かれたその時間に固定されるということです。例えば平安朝の『源氏物語』。あれは文字になっています。だから平安時代に書かれたものでも、今も読むことができる。ドーンと飛んで、皆さんが作るブログも文字として残ります。言ってみれば文字として読めるものは、1000年前のものでもネットで書かれた3秒前のものでも、すべて、書かれた時間に固定された過去のものであるということなのです。ここはけっこう大事だと思っています。
③フェイク・ニュースかどうかの判断が難しい
これはトランプさんがよく言っていますね。商業出版の場合は当然校閲部があって、皆さんが手に入れた情報については、これが本当に正しいかどうか、誤解がないかを出版社ではしっかりとチェックします。ただ、一般の人が配信するものに関しては、その人の個人的な感情や、ファクトチェックをどこまでしているのかも分からない。これが混在するのがインターネットということです。
④「検索」しなければならない
インターネットで情報を得ようとしたら、検索しないと出てこないということです。これがインターネットの特徴だと思っています。
 中でも2番と4番が特徴的かと思っています。無料で手に入るインターネットの情報は、基本的に全部、過去のものであるということ。そして、検索という行為をしない限りは情報は手に入らないということです。逆から考えるとこうも言えます。

「いま価値があると思えるものは過去のものではない」。そして「検索できない」

これが「いま価値がある情報」ではないかということなのです。今回の講演では、過去のものではない生の情報をどう収集していけばいいのか、私の体験を交えてお話ししたいと思っています。初めに「視点・行動力・五感」というキーワードを書きました。その辺の話から入っていきます。



『視点』が情報に価値を与える

ここからは「週刊SPA!」をやっていたときのエピソードを交えてお話しします。30年ぐらい前になるでしょうか、私がまだデスクをやっているころ、モノクロページで「ニュース報道紋切り辞典」という企画を作ったことがあります。これはけっこう面白い企画でした。どういう企画かというと、当時、「週刊SPA!」の編集部員の1人がテレビでニュース報道を見ていたとき、どうもよく分からない言葉を使っているなと疑問を持ったのです。キャスターやアナウンサーは普通に使っている。でも、とにかくよく分からない。
 どういうものかというと、私もこれはよく聞きますし、皆さんも聞いたことがあると思います。「泥棒が入りました。窓がバールのようなものでこじ開けられました」。バールって分かりますか。釘抜きです。「バールは分かるけど、バールのようなものって何? 全然頭に浮かんでこないじゃん」。そういう疑問を持った編集者がいて、スタッフが「それ、面白いね」という話になったのです。確かにニュースの中でよく使われている言葉で、ちょっと突っ込んで考えると分からない言葉というのがある。その辺から「それ、あるね」という話になり、それを企画して「ニュース報道紋切り辞典」という企画を作った。これはけっこう評判がよかったです。特にこの「週刊SPA!」が出た翌日、安藤優子さんが、今はお昼のワイドショーに出ていますが、当時は夕方のニュースをフジテレビでやっていて、同じような泥棒の事件があったときに「バールで」と言っていました。「読んだな」と、ちょっと嬉しかったですけどね。そんなエピソードを憶えています。
 何を言わんとしているかというと、今だったら「バールのようなもの」という話をキャスターがして、それがすぐネットニュースとして流れます。これはキャスターが言った過去の言葉としてネットに流れる。ただし、「バールのようなもの」というところに疑問を持った編集者の疑問はネットからは読み取れません。つまり過去の情報でも、その編集者が「バールのようなものって何?」と疑問を持ったところから、その過去の情報は新しい視点が加えられ、新しい情報に変換できたということなのです。
 意味、分かります? 「バールのようなもの」というのは、キャスターの言葉としてサッと流れてしまうかもしれませんが、そこに「バールのようなものってどういうことなの?」と疑問を持ったところから、この「バールのようなもの」という情報はワンランクアップして、「ニュース報道は意外に紋切り型の言葉を使っているな」という情報にシフトしているわけです。つまりそこに編集者の「視点」が入っている。ですから、過去の情報でもそこに新しい疑問や視点を付け加えたときに、過去の情報は新しい情報に生まれ変わるということです。これが過去の情報を新しい情報に転換する一つの方法なのです。
 ではどういうふうにすれば、古い情報を新しい価値のあるものにシフトできるかということです。そのやり方を実はもう彼がやっているわけです。つまり、「バールのようなもの」という古い情報から、「ニュース報道には紋切りの言い方がある」というところに、そして「ニュース報道紋切辞典」というタイトルに結実した。
 
疑問に思ったものを言葉にしてみるということです。今の話でいうと、「バールのようなもの」は、キャスターの人が使っている一つの単語です。そこを彼は「ニュースキャスターの言葉は紋切りじゃん」という視点を与え、「ニュース報道紋切辞典」というタイトルに転換している。ここが大事なのです。私がいたときの「週刊SPA!」は「タイトル雑誌」と言われて、この「視点」をどう見つけるかが「週刊SPA!」を作るうえでは非常に大事なことでした。だから、情報に「ある視点」を入れてみるということが、古い情報を新しい情報に転換する一つのやり方だと今でも実は思っています。
 ではなぜ言葉にするといいのかということです。四つあります。
①テーマが明確になる
先ほどの例でいうと、「テレビのニュース報道は意外と型にはまった言葉遣いの報道をしている」。これはテーマですよね。それが言葉にすることで削ぎ出されてくるということです。
②読者が見える
これは当然、「週刊SPA!」の読者ということになりますが、当時は28~30歳ぐらいの人がメインでした。テレビや新聞のニュースを興味深く見ている人には、「バールのようなものって何?」という言い方は結構面白いテーマだと思ってくれたのではないかと思います。
③情報が絞り込める
「テレビ報道には紋切りらしい言葉遣いがある」と一応仮定し、この仮定に沿って過去のいろいろなニュース報道の記事などを集めました。当時は大宅文庫しかなかったのですが、今はネットというすばらしい武器がある。このときに「検索」は強力な武器になると思います。ですからネットというのは、何かを調べようと明確なものがあったときにはものすごく強い武器になっています。今、本当にネットはすばらしいと思います。ただし、調べるターゲット、検索することが明確であるならばということです。
 もう一つ言うと、ネットはみんなが見ているということです。つまり、競争率が高い。でも「視点」を加えれば、視点を見つけた人間だけの情報になります。だから、「視点」を見つけることが非常に大事なのです。
 「バールのようなもの」から「ニュース報道紋切り型辞典」まで持ってくるのは一種の力技です。ここまで持ってくるにはけっこう力が要ります。どういうふうにしてそこまで持ってくるか。初めはそんなキャッチコピーにはなっていません。まだもやもやしています。ですから、言葉にしようとしたときにどうしても固まらないところがある。「何かまだちょっともやもやしているなあ」という感じがあります。それを繰り返し精査していくと、この企画で足りないところが見えてくる。ここを削ぎ出していくことが非常に大事で、あきらめないでやり続けていくと、だんだんとテーマが見えてくる。テーマを発見するのは大変です。あきらめないで考えることがすごく大事かと思います。
 「週刊SPA!」の仕事はほとんどこれでした。今は分かりませんが、まだ原稿を原稿用紙に鉛筆で書いているころで、当時ペーペーの私が編集長に書いて持っていくのは、タイトルと100文字ぐらいのサブタイトルです。雑誌でいうタイトルと小リード。それが企画書みたいなものでした。だから、その切り口は面白いか。それから、「切れている」という言い方をするのですが、ちゃんと切れているかどうか。これを編集長に出し続けるということをしていました。
 
 ではちゃんと切れているようなタイトルをどういうふうにして作っていたのかというと、これはもう日々、人と話すことです。喫茶店でも夜お酒を飲みに行ってもいいのですが、編集仲間やスタッフとずっと話を続けてどっちが面白い企画になるタイトルを作ることができるか競争みたいなことを永遠とやっていました。「週刊SPA!」にいるときには24時間こういうことばかり考えていました。
 その中でたまに遊びでやっていたことがあります。頭の体操みたいな感じなのですが、あえて全く関係しない言葉を結び付ける。何でもいいのですが、例えば今で言うと「東京オリンピックと猫」とか、「東京オリンピックと神社」とか、全く関係のないものを結び付けて、これで何か面白いものができないか。そんなことを遊び半分、お酒の戯れみたいな感じでやっていました。その中に「フセインと手相」というのがありました。フセインというのはだいぶ前、湾岸戦争でいきなりクウェートに攻め込んで、最後はアメリカに捕まって絞首刑になった人です。イラクがクウェートに攻め込んで湾岸戦争が起こったころ、各メディアはフセイン大統領を大々的に報道しました。そのときにたまたまニュース報道で、フセインさんが手を挙げて「ハイル・ヒトラー」みたいなことをやって、手相が映っていた。それで「フセイン大統領の今後を手相で占う」という記事をやったことがあります。これを面白いと思うか、くだらないと思うかは人それぞれなのですが、私はこの企画がすごく好きでした。
 ほとんどのところが、湾岸戦争がどうなる、アメリカはどうなのだという非常に硬いニュースをやっていた。その中で「フセイン大統領の手相」というのは、少なくとも他のメディアはどこもやっていない視点のものであったのは間違いありません。今で言うと「トランプ大統領の手相」みたいなものです。それがいいかどうかは別として、全く違った言葉を紡いで頭を柔らかくするというようなことをやっていました。これはけっこう遊びとしても面白いし、頭の体操の訓練になると思います。一つの方法ですが、そんなことをやっていたということです。
 もう一つ、「週刊SPA!」のエピソードで思い出すことがあります。今回のテーマに近いので紹介したいと思います。
 これも私がまだ現場をやっているころですが、私の隣にウラベという男がいました。今はIT企業の社長をやっています。当時は25歳ぐらいで、もうピョンピョンしている元気なやつでした。企画は忘れたのですが、当時、アメリカのモンデール元副大統領が日本に来たわけです。今に置き替えると、トランプさんが来たという感じです。彼は企画の中で「モンデールさんの話が取れると面白いね。いいね」と話して、その5秒後にアメリカ大使館に電話をしたのです。もうすごい。今でいうトランプ大統領にアポを取れると思う人は今でもほとんどいないと思うけど、昔もいなくて、「まさか。無理じゃん!」とみんな言っていた。でも彼は、企画を話した5秒後に調べてアメリカ大使館に電話をしたのです。そうしたら3日後に、当時はメールはないのでファックスでしたけど、ちゃんとしたお断りのレターが届きました。
 このとき「ウラベはすごいな」と思いました。絶対不可能と思っていることもやってみた。でもよくよく考えれば、情報というのは、今でいうトランプさんに話を聞きたいと思ったときにトランプさんという人に会わないと手に入りません。もし彼が思い立っても「それは無理だな」と思っていたら情報はゼロです。完全にゼロパーセント。ただ、彼は電話をした。確率は0.0001%かもしれないけれども、ゼロではない。だから、ボールを持ったら、つまり思い立ったらすぐ行動をするというのはすごく大事だと思います。3日後にファックスでしっかりと丁寧なお断りが来ました。でも、ボールを投げたからお断りの手紙が来た。ボールを投げたから、アメリカ大使館というキャッチャーは、お断りかもしれないけど、ボールは投げ返してきた。
 よくあります。「いや、それは無理じゃないの」「いやー、だって無理だよ」。普通はこうなります。でもそれをやったというのはすごいと思います。これは30年前の話ですが、いまだに憶えています。
 行動をすると何がいいかというと、予定調和ではない、生の情報が手に入るということです。初めにインターネットのことを話しました。皆さんがインターネットで見ているものは、YouTubeにしてもブログにしても全て過去のものです。かつ、多くの人が見ている。多くの人が見るチャンスを持っているものは過去の情報です。それはお金をはらっても読みたい価値ある情報でしょうか?価値ある情報というのは、もしトランプさんに生で会えたとしたら、YouTubeや、もしくはテレビに出ているトランプさんとは絶対違った印象があると思います。生で会うというのはどれほど重要なことか。ここに実は価値ある情報のもとがある。私は今でもそう思っています。ネットなどでこんなものだろうなと思っている情報ではない、自分自身の予定調和が裏切られるもの。つまり、会っていないから読者が手に入れることのできない情報。それこそが価値がある情報だと思うわけです。
 皆さんはネット世代なので、同じことをもう1回違った言い方をしますけど、パソコン見ながら頭で情報を処理しているビット数が例えば100だとします。例えば人に会って話を聞く。実際に現場に行ったときの自分の五感。先ほど言った三つ目の五感です。つまり生の人の表情。しぐさから感じる雰囲気。話し方。着ている洋服。打ち合わせに指定された場所、雰囲気。握手したときの感触。あるいはその人のにおいもあるかもしれない。あとは現場の周りの様子。空気感。そこの音。これは全てディスプレイからは受け取ることができないものです。生の人間、行った人間でしか感じることができない情報です。ここがすごく大事なのです。これを自らが、すぐ過去になってしまいますけど、文字としてみんなに発信する。ここにきっと、みんながお金を出してもいいという思いが出てくるのだと思います。ビット数でいうとたぶん1000倍。100ビットだったら10万ビットぐらい。10万ビットの根拠はありませんが、たくさんという意味です。会いに行くと情報がたくさん詰まっているということです。
 次に、この「会いに行く」ということについてです。ウラベの場合は相手が超大物すぎたというのもありますが、失敗しました。もうひとつ、話をした5秒後に電話をしたというのもあります。、何が足りなかったかというと、

リサーチと想像力です。

 その人に会いたいと思うわけですから当然、リサーチが必要です。相手の性格、行動スタイル。連絡方法は手紙がいいのかメールがいいのか、直接電話をしたほうがいいのか、もしくはブログから行ったほうがいいのか。まあないとは思うけど、いきなり会いに行ったほうがいいのか。どういうアプローチの仕方をすればいいのか。その人を調べていくとだんだんとその方法論が見えてくると思います。「自分はとにかく情熱を持っている。なんでもかんでも当たって砕けろでなんとかなるよ」ということではなくて、常に自分ファーストではなく相手ファースト。相手が何を求めているのか、どういうアプローチをすれば会ってもらえるのか、相手ファーストで考える。これはすごく大事だと思います。
 実はこの講義の前の前の講師が、テレビでもよくみる幻冬舎の編集者、箕輪厚介さんでした。彼の講演を私も聞いていて「ああ、同じだな」と思ったところがあったので、ここは少し彼の言葉を引用してお話をしたいと思います。
 彼は編集者なので、本を作るときには当然、著者を口説かなければいけない。だから、本を書いてほしいということでリサーチをするわけです。彼は両極にいる二人の話をしていました。1人は、今彼がいる幻冬舎の社長、見城徹さん。それともう1人がホリエモンさんです。
 見城徹さんにはどういうアプローチをしたか。見城さんは炎の人ですから、五木寛之を口説くためにあらゆるコラムを読んで全て手紙を書き、17通目に返事が来て、25通目に五木さんに会った。そういう人です。それぐらいに熱情の人です。だから、箕輪厚介さんは見城さんに会うために当然、徹底的に彼を調べます。会う前の24時間は、見城徹が乗り移ったように調べたようです。夢の中で彼が言っているコメントはほぼそらんじるぐらいまで覚えた。そうして彼はどういう行動をしたか。本人いわく「ぜひあなたの本を作りたいという、燃えたぎるような熱いラブレターを見城さんに送った」のだそうです。当然、見城さんはそれを見込んで会ってくれた。結果として、本を1冊も作ったことがない箕輪さんが初めて作ったのが、見城徹さんの『たった一人の熱狂-仕事と人生に効く51の言葉-』という本です。初めて作った書籍が見城徹さんの本だと言っていました。すごいねえ。作らせたほうもすごいんですけど。というふうに熱情を込めて見城徹さんに持って行った。

 ホリエモンさんの場合はどうだったかといったら、もしそんな熱い手紙を書いたら、ホリエモンさんは「ウゼーと言う」と言っていました。彼が求めているのは合理性なんですって。ではどういうふうに彼を口説いたか。彼が作ったのは『多動力』という本です。8人のインタビューをまとめたものですが、全部自分でインタビューして、自分で書いた。ほとんどお膳立てをしておいて、ホリエモンさんに「最後にちょちょっと感想を書いてもらえます? 車の中ででも書けちゃいますよ」みたいな言い方をしたのだそうです。そうしたらホリエモンさんから「あ、すぐできるじゃん」という返事が返ってきた。ホリエモンさんには今20人ぐらい本を作ってほしいと編集者が順番待ちをしているらしいのですが、順番をすっ飛ばして本を作ることができたということだそうです。
 見城徹さんに「すぐできちゃいますよ」と言ったら、たぶん、ぶっ飛ばされると思いますね。だから、彼がしていることは、人によってアプローチの仕方を全く変えているということです。自分の気持ちをぶつけるのではなく、相手が何を求めているかを冷静に判断して、相手に合わせて手法を変えている。自分ファーストではなくて、必ず相手ファースト。相手が何を求めているかを常に考えて、それを実践していく。これは取材を受けてもらう大事なポイントだと思います。



 価値ある情報というのは人が持っているわけです。だから、その人間から抽出しなければいけない。人から話を聞いて情報を持ってこなければいけないのです。ではどういうふうにすれば人から価値ある情報を引き出すことができるのか。
人から面白い話を聞き出すために大事なのは、まず相手から「話をしても大丈夫な人間」だと思われることです。当たり前ですよね。自分のことを考えても、例えばいきなり電話がかかってきて、「すみませんけど、ちょっとお話を聞かせてもらえませんか」と言われて会った。そのときに「なんだ、こいつ」という印象を持ったらどうしますか、皆さん。私だったら、時間を取ったのだからと思って本当に建前しか言わないか、もしくは「すいません、ちょっと時間がないので」と言って切ってしまうか。こんなものですよ。
 だから、相手から話を聞こうと思ったら、まず自分が信頼できる人間だと思ってもらわなければいけないということなのです。これは人間関係でも恋愛関係でも当たり前ですよね。とにかく信頼できる人間であると初めて会った人間に思ってもらわなければいけない。これは玄関口なのですごく大事なことです。ではどうすれば相手から信頼を得ることができるのかということです。会う前にリサーチは必要だと前述しました。
①十全な準備です。
相手はどういう人なのか。どういうものが好きで、どういう仕事をしていて、いつもどのようなことを発信しているのか。こういうイロハを調べておくことが大事です。
②強い思い
人間というのは、会ったときにその気持ちが言葉に出るんですよ。強く会いたいわけです。自分が持っていない情報を持っている。そのために忙しい中、時間を取ってもらって会いに行くわけじゃないですか。だから、その人に本当に話を聞きたいという強い思いがあると、会ったときにそれが言葉の中に出てきます。構えなくても、普通にしゃべっている中でも、その思いというのは出てきます。
③相手をリスペクトする
自分が持っていない情報を相手に聞かせてもらうということなのでリスペクトします。リスペクトするとどういうふうに言葉が変わってくるかというと、言葉が丁寧になります。当たり前です。尊敬している人に「いいんじゃねえ」とか、タメ口は利かないですよね。マツコ・デラックスさんがテレビの中で、「インタビュアーで一番いやなのはすぐタメ口を利く人」と言っていました。これは分かりますよね。友達ではない。初めて会っているわけですから。
④背伸びをしない等身大の自分でいい
初めて会う人から話をを引きだしたいときには背伸びをしないこと。知ったかぶりをしないことです。。相手が例えば肩書の高い人だとか、たまたま自分がかじったことのある分野のプロフェッショナルな人だとかいうと、ちょっと格好つけて「あ、知ってます、あたし」みたいになりがちです。これは絶対やめてください。何も知らなくていいのです。知らないから聞きに行く。知っていたらお前書けよとなってしまうからね。だから、「私はバカだから」と本当に思っているとしたら、バカのままでいてください。それで十分です。決して無理しないで自分の等身大でいてください。そこが大事です。
⑤誠実であること
それが次の誠実であることに繋がります。自分の素で、自分の技量に合わせ、しかしそれでも十全な準備をして、強い思いを持ち、相手をリスペクトし、等身大の自分で誠実に話を聞く。相手がまともな大人だったらちゃんと話は聞いてくれます。これは基本的なことなので覚えておいてください。
 もしこれで成功したあとにどうするかといったら、もっと親しくなりたいじゃないですか。そうしたらみんなよくやっていますよね。サラリーマンが接待と称して一緒にごはんを食べたりしている。合コンで初めて会って電話番号を交換し、次は何をするかといったら、お食事をするじゃないですか。同じですよ、人間ですから。会ってちょっと親しくなったらお食事をする。一緒にスポーツをする。サウナに入る。親しくなる段取りというのはいろいろあります。それをやればいいと思います。ネット社会であれば、メールやLINEでやりとりするようになったら次はオフ会で会うとか、いろいろ方法はあります。いつも皆さんがやっていることをやっていけばいいと思います。
 ここでまた養老先生の言葉を借ります。ネット社会の始まりというと、私が知っている限りでは「Windows95」の登場からだと思います。登場したのは1995年。たかだか25年前です。でも養老先生いわく「人間は5万年変わっていない」というのです。人は変わっていない。情報のやり取りの手法は大きく変わりましたが、根幹の人間は5万年変わっていないので、親しくなろうと思ったら古典的な方法でいいのです。先ほどの①から⑤をちゃんと踏まえてやっていけば、だんだん親しくなってきて、初めは硬かった取材相手がだんだん本音を言ってくれるようになるということです。
 ではなぜ本音を引き出すことが大事なのか。本音の反対は建前です。建前の話というのは基本的に面白くありません。例えば話題になった話をすると、吉本所属の芸人さんが、反社会勢力のパーティーに參加した參加していないという話が出ています。ネットニュースででちらっと読んだのですが、「芸人さんがもし反社会勢力のパーティーに間違って出てしまった場合は、そんなもの反社会勢力なのだから、そこで毅然として帰ったらいいじゃないですか」と言った人がいるらしいのです。しかし、そんなことできますか? 反社会勢力のところに知らずに呼ばれて「なんとなくおかしいなあ」と思っていたら、だんだんと廻りが酔っぱらってきて、よく見たら入れ墨だらけ。その最中に「すいません、私は反社会勢力のパーティーには出られません」と言えるヒト、いますか。僕はできないですよ。僕だったら「すみません、ちょっとオシッコに行きます」と言って、トレイに行ったふりして逃げます。つまり、建前というのは格好いいのですけど、できないでしょう。こういう話を堂々と書かれても面白くありません。
 面白い話というのは、こういう経験のあった人が実際にどうしたかなんです。これは本音の話ですよね。「いやー、ちょっとトイレにも行けなかったので我慢してたら、ビビって、少し漏らしてしまったのね」みたいな話のほうが断然面白い。リアリティがあるからです。それが本音の話なのです。でもこの本音の話というのは、会ってすぐには言ってくれません。やはりある程度親しくなってからです。自分の恥ずかしいところですよね。そういうところの話はある程度その人間とコミュニケーションができていないと生まれてきません。
 だから、そういう本音の話をもらうためには、先ほど言ったような信頼関係を築いて、そういう話ができるようにしていかなければいけない。そこに「面白い話」がある。これをコピー風にまとめるとこうなります。

読者は、ホンネに触れるものに強く共感する

「そうだよねえ」と思うじゃないですか。吉本の話で「反社会勢力のパーティーに間違って出てしまった場合は毅然として帰ればいい」と言って、「そうだよね」と思う人はいますか。こんな建前を書かれても僕は共感なんかしないですね。先ほど言ったとおり、「いやー、 オシッコが」のほうが僕は好きだし、そっちのほうにシンパシーを感じてしまいます。僕は今でもものを作るときには「読者は、ホンネに触れるものに強く共感する」ということを常に念頭に入れてインタビューもするし、大事にしているところです。



 次に、冒頭に言いました後半の話に入ります。人から本音を引き出すためにはやはり一種、インタビューという技術が必要です。
 インタビューをしたことある人、いますか。意外に少ないですね。基本的な話になりますので、知っている人は「そんなこと知っているよ」となるかもしれませんが、そこは聞いておいてください。せっかく魅力的な人に会うことができ、本音を引き出すまでの関係ができて、現場に行って面白い話を聞けたとして、皆さんはプロですから、それを紙面に反映しなければいけないわけです。ですから、面白い話を最終的にはインタビュー原稿として文字にしなければいけない。それがインタビューです。自分が思っていたものをちゃんと聞き出して、どういうふうにしてインタビューとしてまとめるかというところまでの話です。
 まず、準備しておくものです。これは実用的なことなので順番どおり行きます。
①レコーダーは二つ用意する
話を聞くので当然、レコーダーを持っていきます。なぜ二つ持っていくのか。これは私の苦い体験があるからです。今から10年ぐらい前ですが、ある歴史の先生にインタビューをしました。短い原稿量だったので、レコーダーを置いて1時間程度。インタビューが終わりました。会社に戻ってきて、どんな感じかなと思って聴こうとしたら、入っていない。入っていない。入っていない。いや、まだ思い出しますけど、人間、驚くと固まりますよ。30秒ぐらい机の前で地藏さんになった気分でした。ツツーッと背中に二筋ぐらい冷や汗が流れて、頭が真っ白になりました。でも、幸いなことにまだ記憶に残っていたので、思い出しながら猛烈に書きましたよ。短かったので済みましたが、あれが3時間だったらどうなっていたのだろう。10年前の話ですけど忘れられないです。
 機械というのは100パーセント安全ではありません。何があるか分からないのです。スマホで録る。インタビューが終わった。帰りにスマホを失くした。トイレに落とした。テープレコーダーに入っていた電池が古いままで、気が付いたら電池が切れて半分消えていた。そういう話があるのです。これからインタビューする人、90%は1個でも大丈夫だと思うのですけど、必ず1回か2回はこういうことがあります。私の知り合いでもそういうことがあるという人が何人かいました。ですから、保険として2台持って行ってください。レコーダーとiPhoneでもいいのですが、私と同じ目に遭わないためにぜひ二つ用意してください。
②インタビューをしたいと思った資料(書籍、ブログ記事等々)
インタビューしようと思った人を、当然、リサーチをします。資料があります。本もあります。持って行ける程度のものでいいです。本1冊でもいいし、ブログのコピーでもいい。これはその場で読むという意味ではありません。話の取っ掛かりになればいいかなというぐらいのものなので、何か持って行って、インタビューをする前にちょっと見せるとか、そんな感じのアイテムと思ってもらっていいです。
③質問項目表。
これは当たり前ですよね。何の質問事項も持たずにインタビューに行った人っていますか。いないよね。用意しますよね。インタビューをするときには当然、何を聞きたいのか質問を起こします。感覚的には、1.5時間ぐらいのインタビューだったら10問。3時間だったら20問ぐらいは用意します。基本としてそれぐらいは準備してください。
④カメラマンへの指示
ビジュアルのないインタビューもあると思いますが、雑誌の場合は大概ビジュアルが付きます。だから、決めカットで一つ、あとはインタビュー中でワンカットとか、どういうビジュアルか、カメラマンにちゃんと指示をしておきます。なぜかというと、忙しい中でその取材者を2時間とか3時間拘束するので、その時間内にきっちりとカメラマンに仕事をしてもらいたいということです。ライターさんと編集者、それから取材相手の人が話をしているときにカメラマンがぼうっと見ているというのは変な話で、そのインタビューの時間をちゃんと有効に使うように、事前にカメラマンの人に指示を出す必要がある。そういう意味です。
 準備が終わりました。次にインタビューの心得です。これはけっこう大事なので少しゆっくりやります。
①メモを取るならセンテンスだけに
メモを取ります。ただ、これはやってみると分かりますが、面白いなという言葉をそのままノートに書き写そうとしても、人間はそんな器用ではありません。話を聞きながらノートに文字を書くとなると両方は無理です。文字を書くほうに集中してしまうと、話が飛んでしまいます。でもインタビューで大事なのは、話し言葉をノートに書き写すことではなくて、話をしっかり聞いて、話の中でより面白い質問をしていくことです。こちらがメインです。ただ、「あ、ここ面白いな」というのがあるのも確かです。そのときにはなるべく書くほうに集中しないように、本当に単語とかフレーズとか、それで済むようなものだけにしてください。録音しているから。あくまでメモは自分が原稿を書くときの目安にするものです。とにかく第一優先は話を聞いている相手に集中すること。あとはノートは見ないで書くぐらいの感じにしてください。メモはあくまでも自分の目安にすぎません。大事なのは、インタビューで言われていることを聞き漏らさないこと。流れをずっとつかんでいること。それが優先です。
 今の話に続くのですが、
②次の質問のタイミングを常に準備しておく」
どういうことかというと、よくありがちなミスは、質問項目を見ていますから、質問が10個あったらついついその順番どおり行けばいいかなと思ってしまう。これは大きな間違いです。何度も言いますけど、インタビューで一番大事なのは話の流れです。どういうふうにその話が展開していくのか。これはライブです。巻き戻しはできません。ライブなので話のリズムをどうきっちりとつかむかが大事です。ですから、質問項目が10から15個あったら、質問項目のメモは持っていて構わないのですけど、全部暗記しておいてください。話を聞いていて流れの中で「あっ」と思ったら、「次は10番の質問から持っていこう」とか、「次は3番かな」とか。
 インタビューの成功というのは、自分が想定していた以外の話がどんどん出てくることです。「えっ」と思う話を聞けたら大成功じゃないですか。どういうふうにしたらその話をつかむことができるのかといったら、話の流れを作ることです。どんどん盛り上げていく。質問事項の1~10は単に自分が思いついたまま出しただけで、順番の意味はありません。10問出したことが大事なのであり、話の流れでどんどん質問の順番を変えながら質問していく。当然、自分が想定した以外の話が出てきます。質問項目の中にはなくても、それはすぐそこで質問します。そういうふうにして自分が想定したもの以外の話を引き出すようなリズム、話の流れというものをインタビューでは最優先してください。それがすごく大事なことです。「インタビューの心得」に挙げているものは、実は全部そこに集約されます。
③インタビューは原則一人で行う
インタビューをしている人はだいたいライターさんと編集者の二人という感じですか。1人で行く人。では2人で行く人。半々ぐらいですね。週刊誌をやっていたときには、ライターさんと編集者の2人で行きました。あとからも話しますけど、、一年ほど前「爆笑問題」の太田光さんに50時間インタビューをして本を作りました。取材現場にはライターさんと僕が2人で行きました。このインタビューもこの法則に従っています。なぜかというと、ライターさんは当然、インタビューしたものを自分で原稿に起こします。だから話を聞いているときに頭の中で原稿を作っています。「ここは面白いな」とか、「ここはもっと膨らませたいな」とか、「ここはもうちょっと聞きたいな」とか、原稿を書くことを想定しながらインタビューをしています。
 そのときに横にいた人が、たまたま自分が興味あることを言われたので「ああ、それは知ってます」みたいな感じでポッと入ってくると、一生懸命頭で原稿を構築しながら聞いていたライターさんの流れが切れてしまうわけです。「ここを聞きたかったのに」となる。横からポンと人の話が入ってきたらもう戻りません。ライブなので流れているからです。「すみません、さっきの話をもう一度」というふうにできることはできるけど、話の流れが変わってきてしまう。だから、話の流れを切らさないということ。それはなぜか。何度も言いますよ。想定外の話を引っ張ることが大事だからです。そのためには話の流れが大事。会話をどんどん盛り上げていって引っ張り出すことが大事なのです。リズムや流れが重要なので、インタビュアーは基本的には1人で行うようにしてください。
 でも、横にいる人は聞きたいことがあるわけだから聞きたいじゃないですか。そうしたら話がふっと途切れたときとか、次の質問に移るときとか、そのタイミングでやる。もしくは、1人のインタビュアーが終わったあとに「終わりましたか」と聞いて、「すみません、さっきちょっとお聞きしたかったのですが」という形であらためてもう一度聞くようにする。とにかく流れを妨げることは絶対してはいけないということです。もう一度言いますよ。インタビューというのはライブです。コンサートをするみたいなものなので、本番でそのまま突っ切るしかない。どうせ本番で突っ切るのだったら、盛り上がって最後はワーッで終わりたいじゃないですか。盛り上げていく流れを邪魔しないようにということです。
④相づち等、リアクションの重要性
話している相手はAIではないということです。これは皆さんも分かりますよね。一生懸命しゃべっているのに何にも言わない。「オイ、聞いているのか、おまえ」となってしまいます。だから、大げさにする必要はありませんが、「知りませんでした」とか、「ああ、そうですね」とか、「それ、すごいですね」とか、会話にポンポンとアクセントを入れていく。そうすると相手は乗ってくるじゃないですか。「でしょ」と。
 普通の会話でもそうでしょう。「このパンおいしいね」「どう、おいしかった?」「おいしかった、おいしかった!」。そういうことですよ。人間対人間なので普通の日常会話と変わりありません。話をしている人も「ちょっと俺、面白いことを言おうかな」と思って面白いことを言うじゃないですか。それにちゃんと「面白いですねえ」「知らなかった!」「それ、面白い!」とリアクションしてくれれば「面白いでしょう?」となって、どんどん会話が盛り上がっていく。ここが大事なのです。想定外の話をどう引き出すか。そのためには話を盛り上げていって、相手から本音なり自分の知らない情報なりをグッと引っ張ってくる。これがインタビューの醍醐味なのです。



 次に「インタビュー中の注意ポイント」。ここも大事だから少しゆっくり行きます。

①いきなりインタビューを始めない
営業職でも、初めて会ったときにいきなり商談は始めないですよね。まず名刺交換をして挨拶をします。それから、「いや、きょうはちょっと暑いですねえ」「ずっと雨が続いていますよね」といった話からだんだん相手との間合いを詰めていって、「先週の土曜日はどこかに行っていましたか」「いやいや、雨が降っていたので」「みんなそうですよね。うちもそうなんですよ。じゃ始めますか」という感じで話に入っていく。人間というのは初めて会った人には硬くなるので少し間を置いてあげて、「あっためる」という言い方をするのですが、あっためてあげる。ちょっと雑談しても構わないです。ただこの前、ライターさんとお坊さんの取材に行きましたら、ライターさんが話好きで、2時間もらった時間のうち15分は雑談でした。さすがに「ちょっとやめてくれよ」と思いましたけど、雑談は5分ぐらいがいいかと思います。名刺交換をして、天気の話や雑談をして5分ぐらいすると、だんだんと空気が温まって、「じゃぼちぼち行きましょうか」という話になります。

②質問項目の順番にこだわらない
先ほど言ったとおりリズムが大事です。全部の質問事項を暗記し、話の流れでどんどん順番を変えていく。私は頭の半分では話を聞きながら、頭の半分では次の質問事項を考えているみたいな言い方をします。左の脳では聴いているのですが、右の脳では次の質問はどれをやろうかという感じで考えている。いつもそういう感じでインタビューはしています。

③質問はシンプルに。聞き手は多くを語らない
イチロー選手の退団の記者会見をライブで見ていましたら、取材者が1分以上長々と質問をしていました。そうしたらイチローさんが「長々と質問をしてくれましたけど、ないです」といって、4文字で終わってしまった。もし自分の質問が長くなってしまうとしたら、相手に何を聞きたいのかが自分の中で整理されていないということだと思います。ですから、質問事項は簡素に、シンプルに、明確に作っておくことが大事です。
 これもイチローさんのときにも感じたのですが、一度に三つぐらい質問をする人がいます。イチローさんは真面目だから聞いていたのですけど、最後、「えーと、三つ目って何でしたっけ」になってしまう。大勢の中で自分にチャンスが1回しかないと思うと、三つぐらい質問をしたくなる気持ちはよく分かりますが、もしどうしても三つ聞きたいのだったら、相手が忘れないぐらい本当に短い質問にすることが大事です。インタビューのようにマンツーマンでやるときには、一つの項目に要素を三つも四つも入れないようにする。一つの要素でしっかりと聞く。項目を増やせばいい。とにかく質問は分かりやすく、シンプルにする。これは基本です。そこはぜひ覚えておいてください。

④知ったかぶりは絶対にしてはいけない
まず、インタビューをするときには調査は十全にしてください。しっかりと調査をします。相手が言っていることは「ほとんどどこかで読んだ」ぐらいの感じまで、まずリサーチはしっかりとしてください。そして質問をするときには、「私は全く知りません」という顔をして聞いてください。間違っても、何か言ったときに「ああ、それ、あそこに書いていましたね」とか言わないようにする。十全な準備をして、全く知らないというスタンスで行く。これはすごく大事なことです。
 それをしないと、「ああ、それはどこどこで書いていました」「あ、それは読みましたよ」と言った瞬間に「読んだのだったらいいじゃん」となってしまいます。ですから、前に聞いた話、読んだ話でも「知りませんでした。あ、そうなんですね」と聞いて、自分が知った以上のものを引き出すようにどんどんインタビューで誘導していく。十全に調べて、全く知らないスタンスで聞く。目標は、自分が十全に調べた話以上のものをなんとかして聞き出すということです。そうしたらそれは今まで載っていない、いろいろなところで発表されていない、自分だけがその人からつかんだ情報になるわけです。

⑤疑問点はその場で指摘する
お医者さんとか工学系の人でもいいのですが、特に専門家にインタビューしているとき、俗に言う業界用語を普通に使うケースがあります。でも専門家同士ではけっこう話が通じても、普通の人が聞くと何を言っているのか分からないというものがあります。それはどのタイミングで聞くかということなのですが、その場で聞いてください。あとから聞こうと思ったときには違った内容に行っているので手遅れになります。あとから聞こうと思っても「えーと、何だったけ」となってしまいますし、会話のリズムを壊してしまいます。
 例えば難しいカタカナ用語を使われたら、「すみません、先生。それ何を言っているのか分からないのですけど」とその場で聞く。そうすると、「ごめんごめん。それはこうだよ」とすぐ訂正してくれます。かつ専門家の場合は特に、「あ、専門用語を使っちゃっていたね」と思って、その流れから今度は先生が気を付けてくれて、もし専門用語を使ったとしたら「こういう意味ですよ」とサービスをしてくれるようになります。だから、言葉の疑問点はその場合で聞くようにしてください。これが一番、話の流れを途切らせることもなく、自分も次のインタビューに行きやすい。聞き流したら何を言っているのか分からなくなります。何を言っているのか分からなければ次の質問は準備できません。その話からその先のもっと面白い話に展開できないじゃないですか。「あ、そうですか」で終わってしまう。だから、とにかく自分が理解できないことは必ずそこで質問をする。そのように覚えておいてください。

⑥きれい事の回答には、読者の代表として質問を返す
これは先ほど言いました吉本の話と同じです。建前を言ってこられると、インタビュアーとしては、それは正論で、きれい事というか話の流れはいいのですが、読者のことを考えると、「そんなふうに行かないだろう」という疑問点が湧くと思います。吉本の話を例にとってみてもそうです。そうしたら読者を代表して、「先生、できますか。私はできませんよ」みたいな感じでちゃんと読者の視点で代表として聞いてあげる。
 とにかく、読者はお金を払ってその情報を買うわけですから、先ほど言いましたように本音が大事です。読者は本音に反応します。ですから、建前でサッとインタビューを流そうとする人もいますけども、そこは逃さない。きっちりと本音を聞き出してあげてください。いつも自分が読者のスタンスでいてください。建前に同調しないでください。あくまでも読者の立ち位置になって、ちゃんとリアルに話を聞き出さなければいけないと思ってください。

⑦回答をせかさない
太田光さんの話をします。太田光さんはお会いしてみると、本当に物静かな人です。非常に真摯にずっとものを考えている。こちらが質問しますと、いつもしゃべっている話だとポンと返ってくるのですが、新しい質問だと15秒ぐらいジーッと考えます。「ちょっと間がつらいな」ぐらい黙ってしまう。こちらが「どうしようかな」と思ったら、朴訥に話し始める。そういう感じです。
 もちろん即答してくる人もいるかもしれませんが、本当に真摯な、言葉を大事にしてちゃんと話そうと思っている人はやはり考える時間が欲しいのです。そういうふうにちょっと沈黙のあることがあります。そういうときには、人によりますけど、ちゃんと相手を見て「この人はいま考えているんだな」と思ったら、ちゃんと待ってあげる。太田さんの場合はワーッとしゃべるときはしゃべるし、沈黙して考えるときには考えるというリズムがありますから、ちゃんとそれを見てあげて、それにしっかりと乗っかってインタビューをする。やはりリズムが大事です。リズムは人それぞれです。どのリズムがいいということはありません。人によって変わってくるので、ちゃんとそれを見落とさないようにしてあげると、面白い話が聞けるのではないか。実際に15秒とか20秒考えたあとの話は面白かったですね。
 
⑧録音を止めても、インタビューは終わっていない
 2時間3時間一生懸命話を聞いてインタビューが終わりました。カチャッとテープを止めます。ここが大事なのです。「録音を止めても、インタビューは終わっていない」。どういう意味かというと、これも自分の身になって考えるとよく分かる話です。普通に喫茶店でしゃべるのは構いません。でもマスコミの皆さんが来て、いきなり目の前にテープレコーダーを置かれて「話を聞かせてください。お願いします」と言ったら、どうなると思いますか。「しゃべっていることが全部このテープに録られてしまう」と思うと、やはり人間、緊張します。取材されることに慣れている人はいつものことだから普通にしているかもしれませんけど、とは言いながら、やはり自分のしゃべっている言葉をテープに録られるというのはどんな人間でも緊張します。
 初めて会った人と名刺交換して、自分の言ったことをテープに録られる。それも結構小難しい質問をされ、一生懸命頭を使って答える。2時間3時間しゃべって「お疲れさまでした」と言って、テープを止めます。そうなったときに人はどう思うか。ほっとしますよ。「おー、終わったか」と思う。この「ほっとした」ところが実は大事なのです。何度も言いますけど、本音を聞き出すのがインタビューとしてはすごく大事なところです。「ほっとした」ところで相手の鎧がちょっと外れる。「やれやれ」となって鎧が取れます。
 そのときに、こっちも終わっていますからテープレコーダーを止める。持って行った資料を片づけたり、「いやー、お疲れさまでしたぁ。本当にきょうはありがとうございました」と雑談をしながら、ちょっと質問をするわけです。「でもさっきの話、面白かったですねえ」。そうすると、「いや、そうなんだよォ。あの話ってさあ」というふうに話が出てきます。コンサートでいうとアンコールです。終わったあとにもうワンチャンスがある。だから、テープを止めた後というのはけっこう大事なワンチャンスです。これで何度か面白い記事というか、内容をつかんだ経験があります。これは人間の心理からすると、先ほど話したとおりで、テープを止めたというと鎧が取れて本音が出やすくなります。ここを逃したら勿体ない。ドラスチックに「お疲れさまでしたー」と帰ってしまうのもいいですけど、ここの余韻はすごく大事なポイントです。録音が終わって帰るまでの15分ぐらいは、テープは止めるのですけど、けっこうワンチャンスがあると思ってください。
 当然、オフレコというのはあります。「オフレコだから」と言われたものに関してはだめですよ、オフレコだから。それを裏切ると信用失くしますからね。「先生、これをもう1回使っていいですか」とか、「もう1回テープを回していいですか」とか言いながらもう1回話を引き出す。もしくはメモしてもいいでしょう。コンサートでいうアンコールの時間は結構おいしいので、ぜひ見逃さないようにしてもらえればと思います。

インタビューをした人でテープ起こしをやる人、いますか。意外に少ないね。みんなテープを起こさないですか。結構お金が掛かるんだよね、テープ起こしというのは。ですから、いろいろなやり方があります。自分で話を聴いているから、録音を一通り聴いて聴きながら原稿を起こしてしまうという人もいます。否定はしませんけど、お金に少し余裕があるのだったら、できればテープ起こしはしたほうがいいと思っています。
 なぜかというと、これはインタビュー原稿の特性ですけど、インタビューの空気を文字の中に織り込みながら、そして言葉尻等を生かしながら、中身のある部分を抽出して読者が読みやすいように構成するわけです。「そうだよねえ」とか、「そうだもんね」とか、その人なりの言葉遣いというのがある。その言葉というのはテープで聴くと音なので、結構流れていってしまうわけです。インタビュー独特の相手のニュアンス、口調というものをもう一度原稿に写し取るためには、やはり音というものを紙に落とし込んだほうがまとめやすいし、インタビューの特性を出しやすいと思います。私は基本的にテープ起こしは出しますが、正直言ってテープ起こしは高い。テープ起こしでも、挨拶とか要らないところもあるのですが、業者はもちろん仕事なのでちゃんと全部やってきます。私は、編集経験のある人に頼んで趣旨を話し、信用できる人なので裁量に任せてテープ起こしをしてもらっています。
 最後にインタビューのまとめ方です。
 インタビューのまとめ方はいろいろなやり方があります。ここだけ話すと原稿の書き方みたいな話になってしまうので、時間もないので本当にポイントだけお話ししたいと思います。
 私のやり方ですが、インタビューをして、まず、テープ起こしをしてもらいます。それを全部読みます。全部読んだら「ここは使えそうだな」というところをマーカーでマーキングし、マーキングしたところを重点的にもう1回読み直します。全体で6ページにするのか、10ページにするのかで使うところが違ってくることもありますが、どういう内容を話されたのかを確認するために、内容別にブロック分けして仮の見出しを付けます。その見出しを見ながら今度は起承転結というか、構成していきます。じゃあこの見出しをまず前に持ってきて、これを真ん中にし、これを後ろにしようかと決める。その構成に従ってテープ起こしを見ながら原稿をまとめていく。これが私のやり方です。これは人によっていろいろありますが、だいたいこんな感じかなという気もします。参考程度に見ていただければと思います。
 あと残り時間が5分ですのでまとめに入ります。
 皆さんはインターネットで情報を集めていると思いますが、価値ある情報というのは、先ほども申し上げたように過去のものではないもの。それから検索ができないこと。ネット検索が主になっている今ではこれが「価値ある情報」ではないかと思っています。それを引き出すためには著者と親しくなる。著者と親しくなるためには誠実であること。そして本音を引き出すような関係になったときには、今ずっとお話ししたようなインタビューの仕方を使って、その著者、もしくは取材者の面白いところを読者が分かるように削ぎ出していく。これを全部含めてインタビュー、つまり価値ある情報を読者の人に提供する手法ではないかと思います。
 ここにいらっしゃる皆さんは僕と同じように編集者であるということですので、最後に申し上げたいのは、編集者であることの特典は会いたい人に会おうと思ったら会えるということです。これを利用しない手はありません。自分の書いたもの、話を聞いたものを広く読者の人に訴求できる立場にいるということです。皆さんはお若いし、いろいろな面白い人に会うと、本当にその人のエキスを吸収できます。自分の成長の糧になります。この立場をものすごく利用してください。普通の人にはなかなかこういうチャンスはありません。この業種に入っているからこそ皆さんに与えられている特典なので、ぜひこれからこれをフル活用していろいろな人に会い、面白い、価値ある情報をどんどん発信していただければと思います。
 以上です。
 司会(山本) 杉田先生、ありがとうございました。



 それでは質疑応答。ご質問のある方いらっしゃいますか。1時間半びっしり講義をいただきましたけれども、こんなことを聞いてみたいという方は挙手をいただいて。

質問者 講義をありがとうございました。過去の情報にタイトルや視点を付けることで新しい情報になるというお話があったと思います。例えば小説などのフィクションの中で、タイトルのような言葉にははっきり表さずに、中の世界観だとか雰囲気だとかで人々のフックになるというのもあると思うのですけど、そういうものの意味はどういうところにあると思われますか。
 杉田 タイトルを付ける意味は、自分の中の企画がもやもやしているものを、言葉にしていくことで自分の固まっていないところを削ぎ出す。その一つのやり方だと言っているわけです。ですから、例えば小説のタイトルは小説の雰囲気というものを表しているわけで、全然問題ない。そういうものだと思います。私が言っているのは、過去のものを新しい情報に転換するには一種、「視点」が必要で、その視点をかたちにしていく一つのやり方として、タイトルを考えると、企画のあいまいところを明確にしていくことができると言っているのです。
 質問者 ありがとうございます。
 司会 ほかにどなたかいらっしゃいますか。ぜひこの機会に。
 質問者 お話、ありがとうございました。著者の発掘というほどではないのですが、取材対象者が事前に決まっているわけではなくて、このテーマで話してほしいという方を探すための準備というか、どういう方を基準に選定されているのか伺いたいのですが。
 杉田 先ほど「バールのようなもの」という話をしたと思います。あれはタイトルを作ることで「ニュース報道は意外に紋切り型の報道がされている」というテーマで、視点が明確になったわけです。もし「ニュース報道は紋切り方だ」というところをやっていこうと思えば、当然、取材対象者は元キャスターであったり、もしくはメディアの大学の関係者であったり、だんだん具体的になってきます。ですから、どの対象者に取材していいのか分からないと思うときには、まだ切り口がはっきりしていないわけです。それをはっきりさせるために、先ほど言ったとおり言語化してみるということです。言語化するというのは難しいです。そこは力技です。何度も言いますが、人とやり取りしながら、これを取材したら一体何が面白いのか、何を聞き出せばいいのか、自分の視点としてはなぜこれを面白いと思ったのか、とにかく詰めていくことが必要だと思います。それが詰められないと、いま言ったように「誰に聞いていいか分からない」になってしまう。詰めていくと、「これだったらたぶんこの関係の人。もしくはこの人」というふうに出てくると思います。出てこないのだったら、出てくるまで考えるしかないですね。「視点」を自分で詰めていくしかないと思います。そこはけっこう大事なところだと思いますね。力が要ります。頑張ってください。
質問者 ありがとうございました。




(2019年7月25日(木)AJEC編集講座での講演より)

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