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晴山陽一氏講演「読む・書く・編集する、そしてプロデュースする技術とは?」

本を書く、作家を育てる、5つのポイント

20年前、47歳で独立し、書き手として、編集者として、パブリッシャーとして、大活躍。また出版塾で多くの著者を育てている晴山氏。エディターの面、ライターの面、パブリッシャーの面からひとつひとつ、疑問文の形で話をされました。疑問文で話すのは、「疑問から本を書く」という話につながり、つまり、本はひとつの巨大な「疑問の投げかけ」なんだと晴山氏は言います。


たとえば『英単語速習術』(晴山書店)の場合。どれくらい速習なのか? 「この1000単語で英文が読める」という副題があるが、本当に1,000単語で英文が読めるのか? という疑問がわく。とりあえず読んでみると「大学4年の時にドイツ語の単語を1か月で6000単語、完璧に覚えました。平均すると1日200語です!」と晴山氏の序文がある。1か月で6000単語を覚えたというのは、インパクトがあって、「一体どうやってそんなことが可能なんだ?」と疑問がわく。逆に言うと、本を書く時も、疑問がわくように書かないといけないし、その答えを明確に提示しなくてはならない、という。


「何を問うているのか」あるいは「問いにどう答えようとしているのか」がわからない本は、晴山氏から見れば、本気で作る気がなかった本、売る気がない本、と見える。紙の本と電子と海外翻訳で20年間200冊、1か月に1冊に近いペースで本を出してきた晴山氏にとって、質問を明確にすることと、その答えを書く、ということをしなければ、読者は付いて来てくれない。次の問いは何か? どうやってこの人はそれに答えてくれるのだろう? ということを読者に期待させなければ、読者は確実に離れていく、と言います。同じ著者の本は、3冊目くらいで飽きてくるのが普通ですよね、という前置きの話の後に、5つのポイントを紹介してくれました。



1、なぜこのペースで本が書けるのか? ~考えながら書くのでなく、考えてから書く

200冊を書き下ろしたわけではなく、紙の本が電子になったり、海外版は誰かが訳したりしているので、実際に書いたのは百何十冊かもしれない。それでも、とんでもないペースである。もしも1か月に1冊、紙の本を書いたとすると、原稿用紙300枚なので、1日10枚書く必要がある。しかし、それは厳しい。「きょうは午前中講演の下準備をして午後は講演をして、夜は350ページ分の校正、翌日は重要な出版社の会議があり、そのあと、仕上げた校正を出版社に持参することになっている。そんな中で1日10枚書くのは難しい。しかし、10枚書かないと300枚に届かないのも事実で、ではどうするか、ということになります」


そうするには、1か月の30日を4等分する、とのこと。はじめの3週間は本の内容を考えたり、新しい企画の売り込みをしたりしている。最後の1週間で執筆する。1週間で1冊、新書では最低5日という。つまり、漫然と1日10枚書いている訳ではない。もうひとつ大事なのは、1週間で本が書けるように、頭の中で書いていること。「出版塾で教えていることだが、何を書くか、5時間で、滔々と語れるようになっていれば、間違いなく本は書ける。つまり、〈考えること〉と〈書くこと〉を分けなさい、と言っている」

考えながら書く、のではなく、考えてから書く。昔の文士は考えながら書いていた。書くということは高度な知的作業なので、当然だ。「でも、それをやったらおしまい!」と晴山氏は思った。1か月1冊のペースで本を書き、同時に新しい企画を考えることなどできない。だから最初の3週間は企画を立てたり、校正をしたり、デートしたり(笑)しながら、自由を満喫しつつ、頭の中で着実に本を書いているのだそうだ。そして、書ける状態になったら、一気に書く。


2、いつ、アイデアがわくか  ~本はメモ帳である

「一番アイデアがわくのは、たぶん、本を読んでいる時です。たとえば、ここに私が気に入っている英語の本があります。付箋がたくさん貼ってあります。ツイッターの“10秒英語塾”を7年間毎晩やりました。毎日5題ずつ出題したので、7年で1万題。その結果、1万ネタをいつでも出せる状態にした。出題のネタはこのような原書から(原書を見せる)。付箋の立て方にも秘密があり、ツイッター塾で出題した名言と、まだ未出題のものとを、付箋の貼り方で区別している」と氏はいう。1万ネタ集める、というのは大変な作業だが「今晩、皆を笑わせてやろう、楽しませてやろう」というサービス精神があると、これが続くという。ツイッターで塾生の反応を見ることが、そのまま読者の反応を試すことにもつながっている。


晴山氏が好きな本で、バイロン・ケイティという米国人女性の著書がある。セラピストだが、世界中を飛び回ってたくさんの人を救っている。その本を読んで、思いついたことをどんどん本に書きこんでいく。好きな本ほど、真っ黒に書き込みがある。彼にとって、本は、メモ帳。本の中に、新しい企画がたくさん書きこまれている。英語本の場合も、著者がこういうふうに説明している、自分だったらこう考え、こう書くだろうな、とひらめいたことを書きこんでいく。本というのは、誰かが考えたことが印刷されたメモ帳。何となく読んで「いい本だったな!」で終わると、たぶん1年たたずに跡形もなく忘れ去るだろう。それは、読書にあてた数時間の空費にすぎない。

気に入った文は、棒を引くのではなく大きく丸で囲む。2回目に読んだ時はマーカーを引く。3回目はマーカーの色を変える。すると、何回読んだか分かる。こんなふうに時間をかけてやった作業を、絶対に無駄にしないで、「空間化」することが晴山氏のコツ。読むための時間は膨大にかかるが、いったん空間化すると一瞬で見通すことができる。「時間の空間化」による省力化は、仕事の大きなポイントのひとつという。



3、執筆テクニックとは? ~1週間を4等分する

出版塾で指導をしてたくさんの著者を育てているが、何を教えているかというと、「本が書ける状態になるのは、どういうことか」ということ。こういう作業を積み重ねていくと、その結果「自動的に書けちゃう状態」になる、と教えている。それは、先ほど言ったように、3週間、頭の中で(あるいはカードを使って)作業をすると、4週間目には、書けてしまう。それと同じことを塾生に教えている。


執筆のテクニックとして、前述したとおり、まずは、考えながら書かないこと。考えることと、書くことを分ける。ただし、本を書くための素材は盛大に集め、カード化させる。カード化したアイデアを、今度は「疑問に答える形」で、構造化していく。そこまできたら、書けるよ、という。実際、ほとんどの塾生が、出版できるクオリティーのものを書いて、電子書籍で出版できている。キンドルで本を出すのは、紙の本の40~50ページ分と、分量が少なくて出版できるから、書きなれていない人にもハードルが低い。今は、スマホで本を読む人が多いので分量が多いものは、電子書籍では好まれないと氏はいう。塾生の中には、無名ながらキンドル総合1位を獲得した女性、2位を獲得した男性もいるという。

最近では、電子書籍から、紙の本の著者に移行している塾生もいる。卓越した心理カウンセラー。「塾で完璧に技術を体得して、半年で電子書籍を12冊書きました。彼の力を認めて、この秋口には彼の本を出版します」

本は1ページ目から書かないのが原則。これも大きなテクニック。「ページの価値は、ページ数に反比例する」と考えている。つまり、1ページ目の価値は、最後のページの価値の200倍あると考える。本を買う時、どんな判断で買うかというと、表紙と初めの2~3ページを読む。この著者とおつき合いしようか、と思ったら、財布のひもをゆるめる。だから、「最初の数ページは、買わせるためのページだ」と晴山氏はいう。晴山氏も、決して1ページ目からは書かないという。

「1か月、最初の2,3週間は頭の中で、構成を決めます。ネタを集め、頭の中で構造化する。本というのは、読む人にとっては、時間的な存在。しかし、作家にとって、本は物体ではなく、まだ見えてないもの、頭の中にしかない架空のもの。出来上がった本というのは、1ページから読む時間的な存在だが、書く前の本というのは、私にとって空間的な存在」という。

構造ができてないのに、本を書くな、と晴山氏は言う。構造というのは、クエスチョンの体系化。タイトルは、読者に大きな疑問を抱かせるためのもの。それが、買うためのエネルギーになる、という。

「序文はいつ書くか。本文が書けてないのに、序文が書けるわけない。本文が出来上がり、この本でどうしても伝えたいことが明確になってから、初めて序文を書く」という。

「序文は難しい、最初のページは最後のページの200倍の価値を持っている。最初の章も、ものすごく難しい。ここで読者を引き込まないと、読んでくれない。ましてや、同じ著者の本を200冊読んでもらおうと思ったら、工夫が必要。それは“めくり力”で、いかにめくらせるかが問題」と晴山氏は言う。めくることが快感にならなければ、200冊売り続けることは考えられない。



4、どうやって、たくさんの著者を育成するのか?

「本に絶対、必要な要素を、L、S、Dと言っている。“めくり力”と言いましたが、読者にめくらせるために絶対に必要な要素。この本、イマイチの売り上げだったな、と感じた本は、もしかしたら、Sが足りないかもしれないし、Dが足りないかもしれない」という。


L(Lojic)……たとえば、なぜ1か月で6000語覚えられたか?に対して、明確に答えられること。


S(Story)……ロジックばかりだと、疲れる。ロジックの好きな読者しか買わなくなる。読者がどのタイプでも、ついてくるのでなければだめ。ロジックに強い著者はいかに物語を入れるかに腐心してほしい。ストーリーとは、たとえば、先ほどの英語の本でいえば、「1か月で6000単語を覚える必要があったので、覚えた。その一部始終をストーリーとして語ることで、読者は著者に共感を持てるようになる。


DはData。事実。(Facts)と言ってもいい。……ストーリーだけで読ませる本は無理があるので、事実が必要。ロジック一点ばりではだめで、物語が必要。そのストーリーですべってはいけないから、事実を示す。データも踏まえてほしい。


もうひとつ、「感覚の優位性」ということがある。大きく、3つに分けると、視覚、聴覚、体感覚(ここに味覚、嗅覚、触覚が含まれる)。人によって一番強い部分、好きな部分が異なる。

ロジックは、聴覚に訴えます。聴感覚優位の人に効く。先生とか学者はひたすら言葉で説明するので、かわいそうなのは、とりわけ小学生。体感覚優位で、動き回りたい時期なのに、朝から晩まで椅子の上に拘束され、言葉・ロジックで授業される。これは地獄だと思う(笑)。

ストーリー、これは体感覚に訴える。つらかっただろう、痛かっただろう、飛び上がるほどうれしかっただろう、といろんなことを体で感じる。これがストーリーのよさ。

データは、視覚に訴える。事実や数字を目で見えるようにする。「めくり力」をつけるには、ロジックとストーリーとデータをうまく混ぜ合わせることが必要、という。

「L、S、Dのコンビネーションがなぜ大事かというと、聴覚優位の人、体感覚優位の人、視覚優位の人、すべての人を満足させることができるからです。1回めくるたびに次は聴感覚の人、次は体感覚の人、次は視覚の人、というふうに相手を変えるくらいのつもりで、変化をつければ、いろいろなタイプの読者がめくりやすくなる。その結果、売れる本が書けるようになる」と氏はいう。



5、なぜ自らの出版社を立ち上げたのか?

「これからは自分で営業する。日本全国どこに旅しても書店に立ち寄って、チェックし、営業する。

20年間、書斎にこもって本を書いてきたが、出版社を作ってよかったなと思っている。独立していきなり、出版社を作っても、こうはいかなかった」という。

なぜ、出版社を作ったか。「何と言っても、本は“創造”行為。アートとは言わないけれど、表紙とかデザインとか表紙の材質とか、厚さとか判型とかいろんなことを含めると作品作りである。作品作りが、著者、編集者、デザイナー、製造、営業などに分業されていることに対しての違和感がきっかけだった」という。

「紙の本で160冊ほど書いてきましたが、仕上がりまでどんな本になるかわからない。どんな表紙か、どんなタイトルになるかもわからない」。何とかしたいと思っても、編集者に、「それは営業の仕事なんですよ」と言われてしまうと、自分の意思の届かないところに本づくりが移行してしまう。「自分はこんな本を作りたいと思って本を作り始めるけれど、結果的に、どんな本ができるかわからないのがつらくて、自分で出版社を作ることにしました」と氏がいう。

「私が出版元で、発売元は、取次コードを持った出版社。そういう意味では、編集プロダクションに毛がはえたようなものでしかないが、書店注文は。万来舎さんと組んでやっているから、在庫やお金の勘定を考えないですむのです。驚くかもしれませんが、私はほとんど一銭も使わずに出版活動をスタートできています。将来は、英語分野だけでなく、ビジネスや思想分野にも進出していきたい!」と、晴山氏は目を輝かす。



晴山氏の講演を聞いているうちに、あまりにもその内容が凄すぎるから、晴山氏のような天才的な人の真似は到底できないな、と思ってしまいます。

しかし、ひとつひとつを検討してみれば、そこまでできなくても、このやり方を少しでも続けてやっていけば、何とか文章を書けるようになるかな、そこそこ売れる本を作れるかな、という気にもさせてくれます。

晴山氏の塾からは、短期間でこの修行をやりきった人が、今後も著者としてどんどん生まれていくことでしょう。また、出版プロデューサーとして、今後、多くのベストセラー本を生み出していくことが予想されます。



(平成29年6月15日(木)AJEC編集講座での講演より)

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