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NPO法人あきた地域資源ネットワーク専務理事 鐙 啓記 氏 一冊の雑誌が地域を変える

 

 

地域文化を創り上げていくために

その成果は出ていますか?

確実に出ていますね。
第1号では秋田の寒天を取り上げたんです。秋田のある年代より上のお母さんたちはなんでも寒天で固めちゃうって話が編集会議で出て、それを藤本さんが面白がって寒天の博覧会をやろうって言い出した。それで寒天博覧会、略して「寒博宣言!」の特集企画が固まったんです。
しかも、それをやろうって決めてからわずか1日で実現させちゃった。雑誌の取材だけだったらそれで終わりでいいわけですけど、あまりにも集まった寒天が見事で面白かったんで、雑誌の取材とは別に2回目もやった。そうしたら40人くらいのお母さんたちが50種類くらいの寒天料理を持って来てくれて、大変なことになった。みんな冗談半分で作ってきてるんじゃなくて、ものすごく真剣なんですよ。中には「寒天料理作りに30年命かけてます」って女性もいて、「私は今日のために30年間頑張ってきたようなもんです」って、最後は感動して泣き出してしまった。
これをきっかけに地元の人たちが、来年以降は自分達でやりたいって言い出してる。この雑誌の特集企画がきっかけになって、そんな風に地域独自の活動が生まれてくるというのは、本当に大きなことだと思います。

企画の立ち上げから博覧会の実現までわずか一日っていうのはすごいですね。

やっぱり笹尾さんとか、同じく編集スタッフの一人である矢吹さんなんかの若い情報ネットワークがすごくて、私が全然知らない世界をいっぱい知ってるんですよ。今、秋田にもそんな若い人たちが増えてきてるんです。
東京の大学を出て一度は就職してたり、東京以外で働いていて帰ってきたりというような人たちが秋田でどんどんネットワークを繋げてる。私たちの世代はお互いになんか壁のようなものがあって、誰とでも簡単に友達になるってわけにはいかなかった。同じ映画を語るにしても、思想的なこだわりや志向性の壁のようなものがあった。だけど、今の若い人たちは、そんなものをすっ飛ばしてどんどん仲良くなってしまう。そういうネットワークがこの雑誌を支えていると思ってます。何をするにもものすごい勢いで情報が集まってくる。手伝いの人も来る。物も集まってくる。そういうネットワークの力には感心させられるばかりですね。
かつては一度東京や県外に出てしまった人が帰ってくる場所はなかった。なんか、秋田に帰ってくることが負け犬のような、そんな感じがあった。実際、京都から秋田に帰ってきたばかりの頃の笹尾さんも、「自分は負け犬のようにして帰ってきた」って思ってたそうです。秋田に帰ってきても仕事もないし、泣きたくなるような毎日だった。だけど、そこで奮起して仲間たちと一緒にギャラリーをはじめて8年間頑張ってきた。そうしたら、数年前からみるみる情勢が変わってきた。今まで仲間たちと築いてきた地道なネットワークがすごくいい形になって活きてきて、どんどん花が咲き始めた。秋田県からアートプロジェクトの仕事依頼なんかもくるようになり、今では押しも押されぬ秋田文化の担い手の一人になったんです。そうすると、今度は笹尾さんの生き方に憧れて東京から秋田に帰りたいって人がいっぱい現れるようになった。彼女と一緒に働きたいとか、同じようにギャラリーをやりたいとか、あるいは秋田に帰ってデザイン事務所やりたいという人もいる。もちろん、秋田から動かずに地元で頑張ってきた矢吹さんのような人も活躍できるような環境ができてきたんです。

そういう若いネットワークが動き始めたという要因の一つに、美短(秋田美術工芸短期大学)の存在も影響してませんか?

それも間違いなくありますね。矢吹さんも美短の卒業生です。デザインをやってて今までギリギリのところで仕事をしてきたんですけど、非常にいい仕事をするので高い評価をされるようになり、それが今回のプロジェクトに繋がっている。
それから、なんといっても美短の先生たちの存在が大きい。美短には硝子工芸で非常に有名な小牟禮尊人(こむれたかひと)先生って方がいらっしゃるんですが、そういう人がいるために、秋田で硝子工芸をやる人がどんどん増えてるんですよ。自分たちの硝子工房を作りたい人が出てきたり、あるいは陶芸を始める人が現れたりするようになった。そういう人たちが笹尾さんのギャラリーで展示会やったりすることでしだいに市民の関心も高まり、今度はそうした企画展示を県の美術館がするようになったりして、どんどん文化的土壌が整備され始めた。
若い作家たちは、いろいろな制約のある古いタイプのギャラリーではやりたくないと思ってる。でも、笹尾さんのギャラリーだったら難しい制約もなしに、自分の思うようにやれる。やっぱり同年代にしか通じない心意気のようなものがあると思うんですよ。
それに、美短は先生たちのほとんどは県外から来た人たちですから、藤本さんと同じような目で外から秋田を見てるわけですね。秋田の悪い所を嘆くのではなく、一緒に頑張ろうという姿勢がある。人生の若い時期にそういう人たちから学べる、触れあえるっていうのはとても貴重な体験です。それが今度四年制大学になるわけですから、さらに大きな機会を生むでしょうね。

一つの雑誌作りがさまざまな波及効果を生み出しているわけですね。

雑誌単体で見て、それで収益を上げられるかどうかってことだけを考えてる時代は終わったような気がします。『のんびり』のような雑誌は古い出版社では絶対できないと思うし、やろうという意志もないでしょう。今回は従来の編集の枠に囚われない若い人たちが取り組んだからうまくいったんだと思います。
実は今、日本各地で紙媒体をやってみたい若い人たちってけっこう多いんですよ。各地でこれと同じようなものを作りたいということを行政に働きかけたり、自分たちでお金集めてやったりしてる人たちがいます。だけど、残念なことに既存の出版社なんかは、そういう若い人たちに編集のノウハウを分け与えようとしない。自分たちだけで囲い込もうとする。それは出版社にとってもいいことじゃないと思うんですよ。彼らに自分たちの経験を伝え、ノウハウを分け与えてやれば、それがやがては出版文化の未来に跳ね返ってくるし、自分たちの新たな事業領域を開拓することにもなる。
だから、日本編集制作協会の会員社の方たちも、そんな若い人たちを支援するような仕事に乗り出して欲しいと思います。
紙媒体の未来は決して捨てたもんじゃないですよ。


リーマガジン『のんびり』

リーマガジン『のんびり』

発行:秋田県(観光文化スポーツ部観光戦略課イメージアップ推進室)
2012年7月25日に創刊した秋田県発行の観光客誘致用のフリーマガジン。秋田の県民性である大らかで力強い「のんびり」精神と、経済成長のなかで常に「ビリ」に甘んじてきた秋田を逆手にとって肯定し、郷土秋田に誇りに持とうという思いを込めた「のんびり(ノン・びり)」というまったく新しいコンセプトが全国各地で絶賛されている。
発行部数:2万部/B5判/P64

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