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NPO法人あきた地域資源ネットワーク専務理事 鐙 啓記 氏 一冊の雑誌が地域を変える

 

鐙 啓記

秋田県観光文化スポーツ部観光戦略課イメージアップ推進室発行
『のんびり』プロデューサーNPO法人あきた地域資源ネットワーク専務理事 鐙啓記氏

1953年秋田市生まれ。高校時代より地元秋田で映画の上演団体を組織したり、演劇やミュージックライブの企画を手がけたりする地域文化活動を展開する。秋田駅前で「あぶみ書房」という書店を経営した後、地元の無明舎出版に入社し、編集長を務める。2000年に同舎を退舎した後は、NPO法人あきた地域資源ネットワークを立ち上げ、地域文化活性化活動の一翼を担う。

今、秋田県が発行するフリーマガジン『のんびり』が全国の注目を集めている。
木村伊兵衛写真賞受賞のカメラマン浅田政志氏が手がける表紙写真や、本文デザインからライティングまでのクオリティの高さはもちろん、従来の「観光客誘致用パンフレット」とはひと味もふた味も違うコンテンツ構成も人気の秘密になっており、「『のんびり』を読んで現地に行きたくなった」と秋田を訪れる人や、「2号目が手に入らないので送って欲しい」という依頼も後を絶たないという。紙媒体の衰退が声高に叫ばれる時代にあって、こうした現象が私たちに教えてくれているものは何か。
地元秋田で『のんびり』のプロデューサーを務める鐙啓記氏に、制作の基本姿勢を聞いた。

秋田にしかないものにスポットを当てる

『のんびり』は秋田県庁イメージアップ推進室の発行するフリーマガジンですが、これはもともとどんな形で動き始めたんですか?

県庁が新しい観光PR誌を発行するにあたり、その制作を一般公募するらしいっていう話があったんです。その時に、地元で「ココラボラトリー(以下、ココラボ)」というギャラリー・アートスペースを開いている笹尾千草さんっていう若い女性と、彼女の友人たちが中心になって、これを地元で作りたいっていう話が盛り上がっていたんですね。だけど、彼女たちは雑誌を作った経験がない。そこで、私に相談がきたわけです。こういう計画があるんですけど一緒に組んでやりませんかって。で、面白いね、やりましょうと。

鐙さんは編集経験が長いわけですものね。

秋田の無明舎出版という地方出版社で20年以上編集長を務めていましたが、だからって私が直接雑誌編集に関わるつもりはなかった。せっかくのチャンスだから、ここはやっぱり若い人たちが作った方がいい。今さら年寄りが出しゃばることはないと思って、プロデューサーという立場で裏方に徹することにしたんです。

編集長の藤本さんという方は秋田の人じゃないですよね。

藤本さんは大阪で「Re:S」(リス)という雑誌を作ってた人で、ココラボの活動を通して笹尾さんとは以前から知り合いだった。で、ここは彼の力を借りようということになって編集長になってもらったんです。

スタッフも地元の人と県外の人が混在してますね。

藤本さんが信頼できるスタッフを連れてきてくれたんです。たとえば、表紙写真を撮ってくれているカメラマンの浅田政志さんは、東京を中心に活動している最先端のカメラマンです。3年前には木村伊兵衛写真賞を受賞しています。秋田の若い人たちがそんな人と一緒に仕事をできるチャンスなんて滅多にない。浅田さんのような一流のカメラマンと仕事をしてもらうことで、彼の技術、考え方、写真に対する姿勢のようなものを秋田の若い人たちに伝えていきつつ、同時に雑誌のクオリティも高めていきたい。それが地元のスタッフと県外のスタッフが一緒に仕事をするということの重要な意味だと思います。

実際のコンペにはどんな会社が参加したんですか?

公募説明会には20社近くが来ていて、その中には地元の編集プロダクションのほかに東京の大手広告代理店もいました。そんな激戦を勝ち抜けたのは、やはり私たちの制作コンセプトがよかったからだと思います。
コンペに参加するにあたって私たちが基本にしたのは、秋田にしかないものを紹介していくということです。従来の観光パンフレットのように、温泉やグルメの紹介だけでは面白くない。地元に住んでいる私たちでさえ知らないような、秋田にしかないものにスポットを当てていこう。それを基本姿勢にしました。
そんな考え方をしたのには伏線があるんです。
秋田では一年ほど前から「あきたびじょん」という観光PRキャンペーンをやっているんですが、その総合プロデューサーを務めているのが梅原真さんという高知の方なんです。彼がキャンペーンを展開するにあたって折に触れて言っているのが、今さら他県と同じようなことをやっても仕方がない。やはりその土地土地にある面白いものを出していきましょうと。泥臭いものでも何でもいい。秋田に来ないと観られないもの、触れられないもの、食べられないもの、会えない人を出していこうと。そこで彼が出してた例が面白いんです。たとえば秋田市の八橋(やばせ)っていう所に「盛(さかり)」という中華料理屋があるんですが、そこのレバニラ定食が滅茶苦茶旨い。レバーの本場の大阪の人が「大阪より旨い!」と言ったという。その他にも、角館(かくのだて)に看板もなくて目印は外に出てるでっかいプロパンボンベだけっていう手打ちラーメン屋があるんだけど、こういうものが面白いんだ。こういうところにスポットを当てて外に発信すると、そこのレバニラ定食を食べに行きたいとか、プロパンボンベを置いている愛想も看板もない手打ちラーメン屋でラーメン食ってみたいとかいう人が絶対秋田に来るんだと。これからの秋田はそういうものを大事にしていこうというわけですね。
そんな考え方は、私たちが普段飲みながらワイワイガヤガヤ話していることに非常に近かった。だから、それを基本線にするというのは、藤本編集長を中心にすんなり決まりましたね。

それはやはり県外の人だからこそ発想できるというところがあるんでしょうね。

そうですね。秋田の人間だけだったら、看板のないラーメン屋だとか、レバニラ定食が売りの中華料理屋を紹介しようとは思わない。逆に恥ずかしいから隠しておきたいと考えてしまうかも知れない。だけど、それを徹底して正面から紹介していくことによって確実にもう一つの観光情報発信になる。それをやり抜いて、なおかつあるクオリティレベルを維持できたのは、やはり藤本さんの力量だと思います。私たちも以前から面白いとは思ってたんだけど、そこまで盛り上げる力はなかった。そういう意味では、藤本さんの外からの視点と力というのは大変なものだと思いますね。
それともう一つ、コンセプトの中心に置いたのが、秋田の未来を背負っていく若い人たちに力をつけさせたいっていうことです。こういう新しいメディアを自分たちで作り、情報を発信していく力を身につけていく。その指導をしてくれているのが藤本さんであり、東京や大阪の優秀なカメラマンやデザイナーなんです。私もこれまで秋田で長い間編集の仕事に携わってきた。その経験とノウハウを若い人たちに伝えて、彼等が自分たちだけでいろいろな活動をしていけるようにするのが、このプロジェクトの重要な意味なんだ。それを今回の企画書にきっちりと書き込んだんです。そのあたりもコンペを勝ち抜けた大きなポイントだと思いますね。


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