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株式会社 イースト・プレス マトグロッソ編集部 編集長 浅井 愛 氏 さまざまな価値観を世に送り出す。それが編集者の使命

普通の人の実感が持つ文章の威力

『[日本版]ナショナル・ストーリー・プロジェクト』は読者参加型の面白い企画ですね。

オリジナルはアメリカのラジオ番組の企画で、リスナーから寄せられたショートストーリー(実話)から佳作を選び朗読するというものです。私はこの日本版をずっとやりたくて、それで『マトグロッソ』を発想したくらいです。Web上で投稿できるということでいくらかは執筆の敷居が低くなるでしょうし、普通に生き、暮らす市井の人々の実感に満ちたものを並べる場所にできたらいいなと当初から期待していました。
まず読者に、体験した「嘘みたいな話」を送ってもらい、それを内田樹さんと高橋源一郎さんが選び『マトグロッソ』で公開するという手法をとっていますが、「日本版」ですから、集まった作品からそこはかとなく「いまの日本のある一断面」が見えてくるはず、と意図しています。
この企画は、やればやるほど発見があって、先日も内田先生がラジオ番組に出演された際に「今年いちばん、嘘みたいだった話」への投稿を呼びかけたら、番組にはWebの『マトグロッソ』に届くのとはずいぶんノリの違う作品がたくさん届きました。届いたのは「作品」というよりも素朴な驚きに満ちた、体験者の実感そのもので、だからこそ、その人の生活スタイルや、価値観、姿かたちがありありと想像できたんです。
マトグロッソの場合は、オンラインでの投稿といえども、選者がいて、それも内田樹さんと高橋源一郎さんが読んでくれるということで、意外に敷居が高くなってしまっていたのかもしれません。これからは、肩の力をもっと抜いて気軽に送ってもらえるよう工夫しようと、密かに闘志を燃やしています。

編集者の仕事はさまざまな価値観を世に提示すること

いま、時代が激しく変化するなかで、若い編集者の人たちも新しい時代の編集の在り方を模索していると思うのですが、これからの時代に必要な編集者の資質とはなんなのでしょう。

「等身大であること」それがすべての基本だと思います。大事なのは編集者自身が毎日きちんと生きること。今日起こるいちいちに反応し、怒ったり笑ったり、喜怒哀楽をきちんと感じて、達観しない。斜に構えないことです。
そこから離れて「時代の空気を読もう」とか戦略先行でものを考えていくと、どんどん読者から乖離していく気がします。目の前の人を見ずに何か革新的なことをやろうとか、生活実感から離れたことをやろうとしても、それはきっと届かない。
かつて上司に「あなたの視線は著者にしか向いていない」と指摘されたことがあります。いまはその意味がよくわかります。
その当時は、企画は編集者がコントロールできるものだとも思っていて、「なんでも企画にできる」と信じていました。「あの人がこういう話を書いたらすごいんじゃないか」とか「こういう角度で考えたらおもしろい企画になるはずだ」と考え、企画力、発想力こそが良い本を生むのだと思っていました。
最近では、本は編集者の手のひらの上にあるものではなく、読者と、読者にこの本を届けたいという著者の切実な想いの中にしかないと思うようになりました。編集者はただ、世の中に必要だと思うものをせっせと送り出すということに尽きる。
そういう意味で、編集者の仕事の原点である「信念ある著者の力を借りて、さまざまな価値観を世に提示すること」のすごさをあらためて自覚するようになりました。
イースト・プレスに入社する前、子ども向けのノンフィクションのシリーズ『よりみちパン!セ』に携わっていたときは、子どもたちの命綱になるようなものをつくっていたつもりでした。何も持っていない子どもたちに、「こんな発想があれば武器になるよ。これからどんな状況になっても生きていけるよ」と伝えるつもりで。
でも、最近は「武器がないと生きていけない」という発想自体に違和感を感じるようになりました。「武器がないと生きていけない」と考えると、本当にしんどくなる人がたくさん出てきてしまう。それとは違う発想、価値観だってあるんだということを提示できるものをつくりたいといまは思っています。


嘘みたいな本当の話
[日本版]ナショナル・ストーリー・プロジェクト
選者:内田樹/ 高橋源一郎
Web文芸誌『マトグロッソ』
嘘みたいな本当の話[日本版]ナショナル・ストーリー・プロジェクト選者:内田樹/ 高橋源一郎 Web文芸誌『マトグロッソ』
『マトグロッソ』の読者参加企画『[日本版]ナショナル・ストーリー・プロジェクト』の書籍化第一弾。選者は内田樹氏と高橋源一郎氏。企画の元祖はアメリカのラジオ番組。小説家ポール・オースター氏がラジオ番組で呼びかけ、全米より4,000 通の投稿を集めたプロジェクトの日本版。
イースト・プレス刊/ 定価1,000 円+税
イースト・プレスが責任編集するWeb文芸誌。「マトグロッソ」とは「深い森」を意味するポルトガル語で、物語が生まれ、育まれていく原初の森というイメージを思い描き、内田樹氏が命名。アマゾンの「文学・評論」ページのバナーからしかアクセスできない、人気作家の連載が無料で読めるといった従来の文芸誌の枠を超えた運営で注目を浴びている。ジャンルも小説、ノンフィクション、エッセイ、漫画、写真作品など多岐に渡る連載を掲載。毎週木曜日更新。
http://www.matogrosso.jp/

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