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作家 末井昭氏 作家と編集者の理想の関係
末井昭氏

1948年、岡山生まれ。エッセイスト・編集者。工員、ピンクサロンの看板描きを経てイラストレーターとして出版業界へ。その後、雑誌編集も任され編集者となる。1976年にセルフ出版(現・白夜書房)の創設に携わり、たった一人の社員として入社。数々の雑誌を創刊し、多くの作家や芸術家たちと共同作業をしてきたが、中でも写真家の荒木経惟さんとの仕事は有名。2012年に白夜書房を退社し、現在はフリー編集者兼作家として活躍中。平成歌謡バンド「ペーソス」のテナー・サックス奏者という一面もある。

「写真時代」「パチンコ必勝ガイド」など伝説の雑誌編集者・末井昭さんがセンセーショナルなタイトルで話題のエッセイ集『自殺』を2013年末に刊行した。当初、編集者の依頼には乗り気でなかったという著者がどのようにして一冊の本を世に送り出すに至ったか。その一部始終を聞いた。

編集者の粘り勝ちから始まった書籍づくり

現在四刷りということで、自殺をテーマにしたものとしては売行きが好調です。何がきっかけで始まった企画なんでしょうか?

朝日新聞に記載された「自殺予防」をテーマにした僕のインタビュー記事がきっかけです。僕が小学一年生の時、母親が隣の家の青年とダイナマイト心中をしたというのがあったので、朝日新聞ではそんな体験も含めて話したんですが、その記事が出てから半年後ぐらいに朝日出版社の鈴木久仁子さんから手紙をもらったんです。手紙には「自殺の本には手が伸びにくく、積極的に読みたい、人に薦めたいと思える本と出会えていません。『これなら読みたい』と私が思える、面白い本を、末井さんとつくりたいです」とあったんですが、自殺って微妙なテーマじゃないですか。子どもに自殺されてしまった両親が読むかもしれないし、面白く書けと言ったって迂闊なことは書けませんよね。だから、最初は書く気が起こらなかったんです。

では、最初はまったく乗り気じゃなかった?

だって、楽しくないじゃないですか。ギャンブルの話を書けというのなら面白く書けますけど、自殺ではねぇ。僕が文章を書いてうれしいと思うのは、自分の文章で読者が笑ってくれることなんですよ。だけど、自殺がテーマだったらそれは難しいんじゃないかと思いましたね。それに、自殺のことなんか書いても売れないだろうと思ってましたから。

末井さんが作家ではなく編集者の立場でも売れないだろうと感じましたか?

そうですね。僕はもともと雑誌編集者で、主にエンターテイメントを中心にやってきたから、全然世界が違うわけですよ。おそらく会社で自殺の企画書を出したとしても誰一人賛成する人はいなかったと思いますよ。それに、本のイメージがつかめないわけですよ。自殺の統計とかを集めて真面目に書いても面白くないし、茶化すわけにもいかないし、どんなことを書けばいいのかまったく見当がつかなかったんです。

最初の依頼から末井さんが書く気になるまで相当時間がかかったみたいですね。

一年かかりましたね。手紙をもらった後、鈴木さんと会って打ち合わせをしたんですけど、二人とも人見知りだったので、最初はボソボソ何か話しました。何を話したか全然覚えていませんけど。そのうちに徐々に打ち解けていっていろんなことを話すようになりました。だけど、やっぱり書く気にはならないんですよ。でも鈴木さんはあきらめないんです。だいたい二ヶ月に一回のペースで自殺に関する統計資料を持ってきてくれたりするんです。そうすると、僕もだんだん鈴木さんに悪いことしてるような気がしてくるじゃないですか。資料を集めるのも手間暇かかっているだろうし、むげに断るのも悪いなぁ、と。で、だんだん断れなくなってしまったことと、鈴木さんと話しているうちに、もしかしたら書けるんじゃないかという気にもなっていったんです。それが決定的になったのは、東日本大震災でした。誰しもそうだと思いますが、あの震災を契機に「何かしないといけない」という気持ちになりましたからね。

作家と編集者のコミュニケーションのあり方

お母さんの自殺体験というのも、書く気になれなかった一因ですか?

いや、それはすでに『素敵なダイナマイトスキャンダル』という本で書いているので抵抗はないんです。その経験を免罪符にして書けば大丈夫かなぁとは思っていました。鈴木さんとの打ち合わせの中で、「お母さんの自殺も含めて、自殺に対してどういうふうに思っているんですか?」と聞かれたことがあって、その時、僕は「自殺している人を引き止める気もないし、『自殺しろ』というつもりもない。どちらかというと、『自殺しないでほしい』というふうに考えている」と答えていたらしいんですね。答えていたらしいというのは、自分が言ったことを忘れちゃってるからなんですけど、鈴木さんは覚えているんです。とても記憶力がいい人なんですよ。別にメモをとるわけではないのに僕の言うことを覚えていてくれて、いざ原稿を書くという段になった時、「僕がこういうことを言っていた」と教えてくれるんです。「じゃあ、それをテーマに一本書けるね」っていうふうにやりとりを重ねていきました。

編集者が一方的にテーマを与えるのではなく、末井さんとのコミュニケーションの積み重ねの上に練り上げられていった本なんですね。それってとても良好な関係ですよね。

本当にそうだと思います。この本は鈴木さんと一緒につくったという感じです。決して、鈴木さんにテーマをもらって、自分ががんばって書いたというものじゃないんです。お互いコミュニケーションをとりながら、ああでもないこうでもないというふうに二人で書いた本でした。けれど、それを鈴木さんに言うと「いや~、私は何もしていませんよ」って謙遜するんです(笑)。でも、僕は鈴木さんがいたから書けたと思うし、他の人が編集者だったら書けなかったかもしれませんね。だいたい一年間もほったらかしにしていたら、普通みんなあきらめるじゃないですか。みんな、忙しいですしね。

この本は、ブログ配信をした後、その内容を一冊にまとめられたんですよね。ブログから書籍という流れは企画段階で決まっていたのですか?

はい。一冊丸ごと書けって言われても無理なんで、月一のペースでブログで配信することにしたんです。まずテーマをいくつかピックアップするところから始めて、書けるテーマから順々にブログを更新していく形をとりました。なので、ブログと書籍では構成が変わっています。書籍の目次案は鈴木さんがつくってくれたのですが、ブログより書籍はしっくりした流れになってます。

原稿ができてから、編集者の指示で原稿を書きかえた部分はありますか?

文体は変えてないですが、内容は結構書きかえましたね。鈴木さんはしつこいと言ったら失礼かもしれないけど、結構細かく原稿を見ていくんです。で、僕は鈴木さんに言われるままかなり書き直しました。

具体的にどのように指摘されたんでしょうか?

鈴木さんは「ここは(読者に)届くと思います」という言い方をするんですよ。ということは、届かない箇所があるんだなと思うじゃないですか。鈴木さんにはあらかじめ何でも気がついたことは言って欲しいと伝えていたので、かなり細かいところもすべて指摘してくれましたね。読者に届くか届かないかに関しては厳しんです。

あくまでも「届く」で「届かない」とは言われなかった?

「届かない」とは言わない。編集者は著者の書いたものを否定はしませんよね。もし否定されたら、こっちもやる気がなくなるし、それはありませんね。「もうちょっとこの内容を深く知りたい」という言い方をしてくれました。特に、「聖書との出会い」という章ですけど、あれは10回ぐらい書き直しました。あの時は、もう永遠に終わらないんじゃないかと思ってましたね。最初はものすごく理屈っぽく書いていたんですよ。あと聖書や千石さんの言葉の引用も多かったし。鈴木さんは「引用よりもご自分の言葉で書かれたほうが届くと思いますよ」とメールしてくれて、「あ、やっぱりこれだと分かりにくいか」と思ったりしましたね。

末井さんは編集者の求めている意図を大事にされたんですね。

それは大事にしますよね。最初の読者ですからね。編集者の指摘は、一般読者がどういうふうにこの本を読むかという指針になりますから。あと、ブログで配信していましたから、Twitter上の読者の感想とかも参考にはしていました。「穏やかだけど凄みがある」とか「面白くて一気に読んだ」とか「内容が真っ直ぐ伝わってくる」とか、Twitter上の感想にすごく励まされました。


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