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株式会社 光文社 月刊 Mart 編集長 大給 近憲 氏 雑誌の未来
大給 近憲 氏

株式会社 光文社 月刊 Mart 編集長 大給 近憲 氏。1960年生まれ。1984年入社。『CLASSY.』『女性自身』を経て、2004年『Mart』創刊とともに編集長に就任。

相次ぐ休刊、減少する一方の広告……と雑誌低迷が叫ばれるなか、2004 年の創刊以来部数を伸ばし続けている雑誌がある。昨年の大ヒット商品「桃屋のラー油」、「ルクエ スチームケース」などのブームを仕掛け、産業界から熱い視線を浴びる光文社刊の生活情報誌『Mart』だ。
発信力に富む会員2万人との対話から、読者のリアルな価値ある情報は何なのかを徹底的にリサーチする。「企画は読者のその時の気分の最大公約数を探すことでしか生まれない」という編集長の大給近憲氏に、これからの雑誌の成功条件について伺った。

情報誌『Mart』は主婦の生活を救う

メディアを取り巻く環境が大きく変化し、従来のマスマーケティングをもとにした雑誌制作では、読者は振り向いてくれなくなってきています。一方で『Mart 』は従来の生活情報誌とは一線を画した企画・誌面で、創刊以来着実に部数を伸ばし、広告主からも「ヒットの泉」として注目されています。『Mart』が支持される理由はなんだとお考えですか?

僕は、本来読者と信頼関係を築いていないと成り立たない雑誌というメディアが、読者と向き合うことを忘れてしまったのが、雑誌低迷の一番の問題だと思っています。
特に生活情報誌というのは、読者の生活を考えてこそ価値ある情報を提供できるはずです。にもかかわらず、これまでの生活情報誌の中身は、どちらかというと何となく決まった歳時記を押さえ、そのときのイベントや家事の企画を繰り返すか、徹底した節約特集をするか、どちらかだったような気がしています。
しかし実際の主婦の方々、たとえば幼稚園のママ仲間が集まるとしたら、28歳の人もいれば43歳の人もいて、出身も学歴も夫の職業も世帯年収もバラバラなのが現実です。
そういった人たちが現実生活でコミュニティを成り立たせるためには、会話が成立する共通の話題が必要なのです。いわば主婦同士の「それどこで買ったの?」「それどうやってつくるの?」というような、ちょっとした会話のきっかけとなる情報が彼女たちの生活を支えている。それがないと、地域社会が崩壊している今、新しいコミュニティで生活する若い世代の主婦は孤立してしまう。
ちょうど『Mart 』の創刊時は、主婦の「プチ鬱」といったようなことが問題になり始めていた頃で、主婦たちは危機的状況に立たされていました。それなのに生活情報誌は相変わらず現実の読者と向き合おうとせず、編集側のステレオタイプな価値観の下で制作し続けていた。それならば、そういった主婦たちの役に立つために、人と結びつくための情報を交換できる雑誌をつくろう、ということで『Mart』が生まれたんです。

読者にとっての「旬」「気分」「最大公約数」を探す

主婦を救うための情報を交換できる雑誌ということですが、そのコンセプトを生み出す背景にはどんなことがあったのですか?

僕は『Mart』の前に『女性自身』の実用ページを担当していたのですが、『女性自身』は読者対象が幅広くて、いわば「女子高生からおばあちゃん」のためのマスマガジン。しかし「実用」はターゲットを絞らなければ企画が成立しないので、読者を分析した結果、「30代主婦」をメインターゲットにする仮説を立てました。
そこで当時、お付き合いのあったアパレル関係の方に相談したところ「これからは都市中心じゃなくて、郊外型のニュータウンの主婦の時代」といわれ、横浜の港北ニュータウン*1でグループインタビューを敢行したんです。そこで出てきたのが、「手作りビーズアクセサリーが流行っている」という情報でした。面白いことに、そのコミュニティでは、先生や本をお手本にしているのではなくて、プラザ*2で売っているものを見よう見まねで教え合ってつくっていたんですね。しかも、もっと面白いことに、ビーズアクセサリーづくりがそれほど好きではない人たちもつくっていたのです。これには驚きました。
なぜ、彼女たちはそこまでこぞって、ビーズアクセサリーをつくらなければならなかったのか。
つまり、ビーズアクセサリーづくりが重要なコミュニケーションツールの一つになっていて、それがママ友をつくるきっかけになっていたわけです。新しい郊外型のコミュニティでは、何かコミュニケーションのきっかけになるものがないと、彼女たちは生活していけないという現実がそこにはありました。
好き嫌いを超えて彼女たちをこれだけ突き動かしている情報なのだから、絶対価値がある。そう信じて、今まで取り上げたことがなかった「ビーズアクセづくり」を記事にしました。そうしたら、かつてないほどの反響がありました。こういう、誰もが行動を起こしてしまわざるを得ない情報こそ、読者が求めているヒットの源泉なんだと再認識しました。
それまでは「新商品」「ブランド」という理由で情報価値がある、読者が喜んでくれる、というふうに編集側は思いこんでいたと思います。
しかし、本来読者にとっての良い情報というのは、その時の読者にとっての旬なんです。編集側が提供するものが旬ではありません。編集側が「こういうふうな企画だから、こういう人」と思って探すのではなく、本当の現実から探す情報にこそ価値があるんです。
だから『Mart 』では、読者をニュータウンの30代主婦と仮定して、その人たちが救われる情報だったり、コミュニケーションのサインになるものを一つでも入れることが創刊以来の編集方針なんです。編集側が発信するのではなく、彼女たちの「旬」「その時の気分」の「最大公約数」を探して企画を立ててこそ、読者にとってリアルに使える情報になるのです。
『Mart 』ではタレントやカリスマを起用して誌面をつくらないというのはそういった理由からです。その時の最大公約数の気分を持っているMartコミュニティ会員*3に、旬の情報の語り部になって誌面に出てもらうことが、一番読者の共感を呼ぶのですから。

2万人の会員と絆を深めて生まれる情報の質の高さ

その2万人いるトレンドを目利きする力と発信力のあるコミュニティ会員の情報提供が『Mart 』の誌面づくりを支えているとか。

今、誌面に登場できる「読者会員」は3000名くらいで、それ以外に公式サイトに投稿できる「Web会員」の方々が約1万6000 人です。読者会員になるには履歴書と写真提出という関門があるのですが、彼女たちは『Mart 』を信頼しているからこそ、読者会員になりたいと言ってきてくれる。その時に担当編集者は「この人はこんな『センス』、『サイン』の持ち主」と一人ひとりと向き合い、認識しています。そういった信頼関係を結べるのは雑誌だからこそできることです。
しかもその人たちがどういう経歴で家族構成で、どういう趣味・センスを持っていて、公式サイトでどんな投稿をしてくれているかという情報を持っていることが『Mart 』の強みであり、広告主にとって魅力なのだと思います。
広告主にとって純広告の効果が見えなくなっているなか、『Mart 』では読者会員と協働の商品開発や、周辺ストーリーを重視した編集記事広告など、広告費用の使われ方も創刊以来、戦略的だそうですね。
『Mart 』は公式サイトとの連動で相乗効果を上げる編集記事広告を広告主に提案しています。それこそが、編集者の腕の見せ所なんです。
しかも『Mart 』の公式サイト内のコミュニティの交流は濃密で反応も早いんです。たとえば、広告主と会員が商品開発を協働する企画があったとします。そこで編集が「ちょっと会員に聞いてみましょう」とメールを発信すると、ものの5分くらいで具体的な回答や要望が集まって、商品の方向性が固まったりします。同じようなマーケティングをデータリサーチ会社とか、大手広告代理店はできないと思います。『Mart 』の会員のようにここまで発信力のあるモニターを揃えるのは難しいですから。




*1:港北ニュータウン
神奈川県横浜市都筑区内に広がるニュータウン。
1980 年代半ばから開発され、横浜市北部の副都心と位置づけられている。大規模な商業施設誘致なども話題を呼んだ。
*2:プラザ
「ソニプラ」の愛称で女性に絶大な支持を得た輸入雑貨専門店。現在はソニーから独立した関係で「プラザ」という店名に変更している。
*3:Martコミュニティ会員公式サイト
http://www.mart-magazine.com/内にある「Mart COMMUNITY」に登録している会員のこと。会員はオリジナルレシピやかわいい雑貨のアレンジなど、毎日が楽しくなるアイデアをコミュニティ内で発信し、情報交換している。影響力がある読者としてメーカー各社が注目している。
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