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エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役 土井 英司 ベストセラーを生む秘訣

自分と異質なものを受容する

ヒット作を生み出すために、世代の気分をとらえるセンスは現場の編集者だけでなく、編集プロダクションの経営者にも求められることですね。土井さん自身、20代の時は編集プロダクションで修行されていますが、若手が成長するために編集プロダクションは、どうあるべきだとお考えですか。
恐らく会社の風土に大きく左右されると思いますが、僕がいた編集プロダクションでは、社長が今、何が売れているというようなことをよく話してくれました。
それから、どんなに忙しくても情報が入ってくる機会と、それを社内で議論をする機会を持ったほうがいいと思います。あとは発注元の編集者は意外と情報を持っているので、売れているものに関しては彼らに聞くのが一番です。しかし、それは編プロ側が仕事を依頼されて納品したら「はい終わり」では、そういう関係は生まれません。
僕は編プロ時代、東京ウォーカーを担当していましたが、徹夜して朝7時にタクシーに乗って入稿したあと、どんなに眠くても担当編集者と、1時間お茶をしに行っていました。10時から出社で、寝るひまもないんですけど(苦笑)。でも、その1時間で得られる貴重な情報が、次の仕事につながっていきました。そういう付き合いが発注元の編集者とできるかどうかということです。
経営者側ということでいうと、お亡くなりになりましたがゴマブックスの会長は素晴らしい方だったと思います。『ちびギャラリー*2』というキャラクター絵本が大ヒットしましたが、当初企画を持って来られたときには、当たるかどうかも、何がいいのかも分からなかったらしいです。でも「やってみよう」と。 もちろん、根本的に企画の基礎がなってない、タイトルが体を為してないということだったら、それはもうスキルの問題なので、NGを出していいと思います。ただ、世代の差で「分からないもの」「理解できないもの」というのはあります。それを「やってみよう」と言えるかどうかは、経営者として試されるところだと思います。
自分と異質なものを受容するという資質は、企画・編集する人間に求められる最大の資質ではないかと思います。編集者はいろいろな立場の人と仕事をしていかなければならないし、いろいろな人とコミュニケーションすることで仕事の幅が変わってくる。極論を言えば、嫌いな人でも付き合うことで得られることはあるのです。好きな人とだけ付き合っていたら、新しい情報、新しい価値は生み出せない。編集者の仕事は普段からの交友関係も問われますが、異質な人から得ることでこそ、仕事の幅が広がるのだと思います。

本気で読者を増やそうとしているのか

今、編集制作業界は電子出版の襲来と若者の活字離れで岐路に立たされています。一方で土井さんは日刊で書評のメールマガジンを執筆されたりと、読者人口を増やす活動を精力的に行っていますが、今、出版に携わる人間が市場拡大のためにやれることとはなんだとお考えですか。
やはり、紙の本にしかできないことがあります。特に「触る」という感覚は、子供にとって非常に大切です。赤ちゃん用の絵本に五感を刺激する仕掛けがたくさんあるように、もっと、意図的に触覚を刺激する仕掛けをしてもいいかもしれません。例えば、ロバート・サブダ*3の仕掛け絵本は、大人が見ていてもワクワクします。そういった紙の特性を生かした仕掛けをするということと、あとは人の「所有欲」を満たすための本、人に見せびらかすための本、パッケージにこだわった本づくりというのも非常に重要です。棚差しにしたときにインテリアになっているか、というのもこれから書籍を制作するにあたっては大切なポイントだと思います。
僕自身は読者人口が減ったというよりは、書店の流通が疲弊したというふうに考えています。新しい流通チャネルのアマゾンだったり、コンビニは売れていますからね。昔は何か調べたいときは書店に行っていましたが、今はインターネットで検索する時代です。では、今の時代の書店という機能を考えたとき、ただ本を並べているだけでは倉庫と同じで、インターネットでは得られない情報を発信するところであるべきだと思います。ヴィレッジヴァンガード*4やコミックとらのあな*5といった専門店がウケている理由はそういったところだと思います。
一方で業界が本気で読者を育てようとしているのか、という疑問もあります。例えば、身近な友人に本を読むことを勧めるというようなことです。出産祝いに本をプレゼントするといったことを、この業界全体でやったら確実に読者人口は増えます。交通広告で宣伝するより、本を読まない人に献本する。読書が楽しくなる本、中毒になる本ってありますよね。そういう本を一般の人に配るというのも、一つの方法だと思います。
今の小学生、中学生の親は、自分の子供がゆとり世代のようにならないように、本をたくさん読ませています。だから、その世代が消費の主役になる時代がきたら、また本が読まれるようになると思います。ただ、今の小学生、中学生は紙も電子も使いこなせる子たちですから、表現は従来とちがうものになっていくでしょう。 ですから、僕自身は今後読者人口が増える局面があると思っています。しかし、その循環を待っているだけではなく、業界でアクションを起こしていくべきでしょう。「ビジネスブックマラソン」を書いていて、専業主婦の方から「本を読むようになりました」という連絡をたくさんいただいています。今、読者数は4万9,000人(10月6日現在)ですが、その人たち全員に読書習慣がついたら、すごいですよね。
僕自身、本で人類の英知の偉大さを知り、たくさんのことを勉強させてもらいました。時間を消費するためのゲームやテレビとは明らかに違う、本にしかできないことがある。本は思考する力をつけ、自分の可能性を広げてくれるものです。今後もそれを伝えていければと思っています。

*2 ちびギャラリー
猫の独特なキャラクターと筆で添えられた一言が特徴の絵本。ボンボヤージュ著で2002年よりごまブックス発行。シリーズ累計で150万部を突破している。

*3 ロバート・サブダ(Robert Sabuda)
類まれな発想と卓越した技で、「紙の魔術師」と呼ばれ、数々の仕掛け絵本のヒット作を生み出しているアメリカの絵本作家。代表作に『Cookie Count』、『Winter’s Tale』など。

*4 ヴィレッジヴァンガード
「遊べる本屋」をキーワードに書籍、雑貨類、CD・DVD等を複合的に陳列する専門書店。書店の常識にとらわれない店舗づくりが若者に人気。

*5 コミックとらのあな
同人誌を中心としたマンガを販売する。マンガ、書籍以外にオタク向けグッズの販売もしている。

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