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鈴木 寛 KAN SUZUKI 民主党議員 文部科学副大臣

1964年兵庫県生まれ。東京大学卒業後、1986年通商産業省に入省し、情報政策などに関わった後、1999年に慶應義塾大学環境情報学部助教授へ。教育の世界で活躍した後、2001年に民主党公認で東京選挙区から立候補し、当選。さまざまなNPOの活動へ参加し、現在の政界では教育政策についての第一人者として評価されている。
歴史的な政権交代から9カ月あまり。学力低下、ゆとり教育批判、教員免許更新制、教科書問題……と多くの問題を抱える日本の教育制度は、民主党政権によってどのような変化を遂げていくのか。それにともない、学習指導の骨格である教科書、副教材はどうあるべきなのか。教育改革の鍵を握る民主党参議院議員で文部科学省副大臣の鈴木寛氏に聞く。
コンクリートから子どもたちへ
まず、これからの教材についてお話をお伺いする前に、民主党政権がどのような教育改革をお考えなのかお聞かせください。
昨年、鳩山首相が所信表明演説で示した「コンクリートから人へ」という考え方に尽きると思います。「コンクリートから人へ」というのは大量生産、大量消費といった物質文明偏重主義の社会を終わらせるということ。これからは物質的な豊かさが人々の平和と幸福を保障するのではなく、人と人、人と自然の間における深みのあるコミュニケーションや文化にこそ人々の平和と幸福をつくり出す根源があるということですね。それを具体的な教育政策でいえば、教育環境では教員の質と数の充実、教育内容としてはコミュニケーション力の育成ということになります。外国人が増え続けている我々の社会では、コミュニケーション力の必要性は高まるばかりで、それは外国人との共生だけではなく、相互扶助を基本とした地域社会づくりや絆づくり、障害のある人を受け入れる能力の育成のためにも必要不可欠なものです。
コミュニケーション力の育成は、今の日本の子どもたちに足りないと言われている「自ら考え、解決する力」の育成の一つともいえますか?
大量生産、大量消費といった物質文明偏重主義の社会を支えた教育は、「工場型」の教育です。これは「暗記力」と「反復力」を重視する詰め込み教育でした。子どもたちは家族や教員から「これを勉強しろ」と、トップダウンの教育をされてきたわけです。だから、自分をどう表現していいかわからない。その弊害が鬱や引きこもりなどの社会問題を生み出した。私はこれまでの「工場型」の教育から「劇団型」の教育へ転換しなければならないと思います。「劇団型」の教育ではスポットライトを浴びる役者もそうでないスタッフもそれぞれ素晴らしく、大事な役割だということを教えていく。特に目立たない縁の下の力持ちであるスタッフワーク、役者に照明を当てるといったような仕事の意義、意味、やりがいを教える。コミュニケーション力育成の具体的な手法としては、異文化コミュニケーション、異言語コミュニケーション、スポーツ活動はもとより、いろいろな人物を演じられ、かつ、グループで協働することが求められる演劇といった方法が考えられると思います。また、ボランティアなどの地域のコミュニティ活動も有効だと思います。コミュニケーション力の育成を通して、子どもたちにもコラボレーションのなかで役割を担うことは楽しいということを知ってほしいですし、そうした価値観のもとで学べる学校を増やしていかなければならないと思っています。
詰め込み型の教育を見直すために「ゆとり教育」が生まれたのだと思いますが、「ゆとり教育」の問題点は一体どこにあるのでしょうか。
「ゆとり教育」の定義が非常に曖昧なので、私は「ゆとり教育はけしからん」などといった批判は不毛だと思っています。一人ひとりの子どもの多様な能力を伸ばそうということが「ゆとり教育」であるのならば、私は賛成です。しかし、自民党政権下では、そのための準備に不十分な点がいっぱいありました。教員数は増やしていませんし、教員の質についても現場まかせにしてしまった。それでは、教員の手抜きにつながる「ゆるみ教育」と批判されても仕方がありません。子どもの学びに対する「個別化・個別対応」を行うためには教員の質と数を上げることや一人ひとりの子どもにあった教科書などのツールを整えなければいけないのに、それに対して予算的にも時間的にも追いついていない。そこに「ゆとり教育」が批判される原因があるのです。決して、「ゆとり教育」の概念が問題なわけではありません。
地域の方々が学校運営に参画することで注目されている「コミュニティ・スクール*1」も、そうした「個別化・個別対応」教育の一環ということになりますか?
そうですね。コミュニティ・スクールは、保護者や地域の皆さんの声を学校運営に直接反映させ、保護者・地域・学校・教育委員会が一体となってより良い学校をつくり上げていくことを目指すものです。
コミュニティ・スクールのコミュニティは「地域」に限定せず、「共同体」のようなイメージです。学校、地域、自治体、国が子どもを包み込む「学びのコミュニティ」なんです。現在コミュニティ・スクール一校で約150?250人のボランティアがいますが、さまざまな生徒たちが課題や問題を乗り越えていくために、こうした人たちと関わりあえることを獲得していく場としてのコミュニティという意味なんです。
コミュニティ・スクールでは教師の役割も変わってきます。今までのようにトップダウンで「教える」というより、どのように生徒一人ひとりの「学び」をプロデュースしていくか。「ティーチャー」としてではなく「エデュケーター*2」としての力が必要になってきます。
*1 コミュニティ・スクール
平成16年9月に導入された新しい公立学校運営の仕組み。保護者、地域住民からなる学校運営協議会が、教育委員会、校長と責任を分かち合いながら、学校運営に携わっていくことで、地域に開かれ、地域に支えられる学校づくりを実現することを目指すもの。
*2 エデュケーター
「educate」の語源は、「外へ」を意味する接頭語(e) と「導く」を意味する語(ducere)から成るといわれている。つまり「エデュケーター(ecucator)」 とは、「子どもの能力や可能性を導き出す教育者」のことをいう。
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