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NEC CSR推進部 社会貢献室 主任 池田 俊一氏 次代を切り拓く社会起業家の創出
「貧困」「農業」「教育」「子育て」など、社会が抱える課題をビジネスの手法によって解決する「社会起業家」が注目されている。
そのブームの立役者であり、社会起業家の登竜門とも言われているのがNECが開催する社会貢献プログラム「NEC社会起業塾」だ。
カタリバ」「フローレンス」「かものはしプロジェクト」など、多くのチェンジメーカーを輩出し、行政からも一目置かれる「社会起業塾」開設の意義について、NEC CSR推進部社会貢献室 主任の池田俊一氏に聞いた。
ソーシャルイノベーターたちを生み出す「NEC社会起業塾」

ここ数年、メディアで「社会起業家」の露出が増えたり、若者の間でもNPOへの就職希望者が増えるなど、「社会起業家ブーム」ともいわれています。御社では2002年からその先鞭ともいえる「NEC社会起業塾」を開催し、社会起業家の創出に寄与されていらっしゃいますが、CSRの一環として行うその目的などをお聞かせください。

弊社では社会貢献プログラムとして、五つの中期的なテーマのもとに全20ほどのプログラムを用意しているのですが、そのテーマの一つである「社会変革に資する起業家育成」のプログラムのなかで、特に力を入れているのが、「NEC社会起業塾(以下、社会起業塾)」です。
社会起業家は「医療」「世界の貧困」「教育」「子育て」「農業」などのさまざまな分野の社会的課題に事業で取り組むソーシャルベンチャーや事業型NPOのことを言いますが、社会起業塾では事業起ち上げ期の彼らに対して、弊社のもつネットワークやリソースを活用して、事業拡大におけるさまざまな課題解決を支援するのが目的です。彼らの成長を支援することが、社会の課題解決に直接結びつく、というふうに考えています。
また、そういったNPO、NGOとパートナーシップを結び、お互いWin-Winの関係を築いて、その結果が社会的課題の解決をし、さらには弊社の新しいビジネスの創出につながっていくことも目指しています。

今、お話に出ました「NPO、NGOとパートナーシップ」ですが、なぜ御社独自で活動するのではなく、NPOらとの協働が重要なのでしょうか?

弊社の社会貢献プログラムの基本方針に「NPO、NGOとのパートナーシップ」があるのですが、NPO、NGOはその社会的課題の専門家であり、情報量と人的ネットワーク力、アンテナ力が非常に強い。ある社会的課題に対して、一企業で取り組むよりも、彼らと協働して行ったほうが、遙かに課題を持つ当事者たちの声や最新の動向がわかります。
一方でNPOやNGOはハード、ソフト両方のリソースが足りないというところが多いので、そういう部分は弊社が補完するといったWin-Winの関係を目指しています。
従来、企業が社会貢献のために何かをするというと慈善的な寄付などの金銭的な支援が多かったのですが、コーズマーケティング*1の台頭に代表されるように、社会的課題をビジネスチャンスと捉え、企業利益と社会的課題の両立を図っていく、という考え方に移行してきています。
そういった視点からもNPOとの協働というのは非常に重要だと感じています。

若者のロールモデルとなった若手社会起業家たち

企業のCSRというと環境保全や発展途上国の支援など、活動内容はどの企業もそれほど差がないという印象です。一方で御社の活動は多岐に渡っており、そのなかでも今回お伺いしている「社会起業家の創出・支援」をテーマに据えた背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

弊社がなぜこの社会起業塾を開催しているか、ということの根幹には、弊社の掲げている「NECグループビジョン2017」があります。弊社は「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」を目指しているのですが、これを実現するには従来の企業体としての事業活動に加え、企業市民としての社会的課題解決への貢献というニーズへの対応をしていかなければなりません。そのためCSR推進部で数々の社会貢献プログラムを開発し、グループ社員全員が参加できる仕組みになっています。そのなかでも特に社会起業塾は弊社のリソースを使って、社会的課題解決の現場に直接関われるプログラムとして、重要視されています。
また、「社会起業塾」がスタートした2002年当時の日本には、まだ「社会起業家」という言葉はあまり知られていなかったのですが、1990年代、アメリカでは製造業の工場などが中南米やアジアに移転したおかげで雇用が空洞化し、問題となっていました。そこで社会課題を解決するさまざまなソーシャルベンチャーが現れて、雇用の受け皿となったのです。アメリカで起きていることは日本の近い将来ですから、時代をリードしていくためにも、日本ではまだ潜在的だった社会起業家を一人でも多く輩出したいという使命感もあり、スタートしました。
おかげさまで、毎年継続開催しており、現在計37団体(2011年3月)の支援をしています。そのなかでも病児保育のフローレンスや学生のキャリアデザインを事業とする「カタリバ」、カンボジアの子どもたちに職業訓練を提供する「かものはしプロジェクト」、農家の営業活動を代行する「おこめナビ」を運営するTINAなど、メディアでも注目されている若き社会起業家たちが多数輩出され、確実にイノベーションを巻き起こしています。

最近は社会起業塾が社会起業家への登竜門と評価されるなど、ますます注目度が高くなっているそうですね。

例年30団体くらいの応募があって、審査後に選出された3~5団体を支援していたのですが、リーマンショック以降、市場原理主義の終焉という時代の追い風もあってか、ここ数年応募団体が急増しています。ちなみに昨年は62団体の応募がありました。
特に学生の間では、この社会起業塾の卒業生らの生き方が一つのロールモデルとなっているようで、就活生の弊社への志望動機に「社会起業家を支援しているから」という声が多数あったり、私自身、大学の講演に呼ばれて社会起業家について説明したり、ゼミの研究テーマでも扱われるなど、今、大変ホットなテーマになっていると思います。

事業成功の鍵は「共感性」の伝播

具体的に「社会起業塾」はどのようなことをされているのですか?

期間は約半年ですが、その期間に事業の成長を加速するためのプログラムが用意されています。
特に起業塾では経営知識、戦略の策定やマネジメント、資金調達など一般的な経営に必要な支援だけではなく、社会起業家にとって重要な「共感性」を伝播させるコミュニケーションの手法の指導も重視しています。
と言いますのも、社会起業家というのは普通に起業するより困難な課題に取り組むわけですし、何のリソースもないところからスタートするのですから、より協力者、支援者が必要になってくるのです。いかに「協力したい」と思ってもらえるか、共感してもらって巻き込んでいけるかというのが、起業家として成功するか否かの分かれ目です。ですから、支援者に共感してもらうためのプレゼンテーション手法やメディアづくりなどを指導することで、彼らの社会的評価や信頼性を高めることにも重きをおいています。
プログラムの特徴としては、事業を加速させるために先輩起業家がメンターとなって参画する場づくり、卒業生や同期のメンバー、さらにはNECの社員との経験や知見の共有、切磋琢磨していく場づくり、そして社会起業家たちの事業の方向性に共感するパートナー企業とのマッチングなどがあります。
なかでもバーチャルボードミーティングと題した仮想取締役会では、起業家メンバーの課題の整理や施策立案などは定期的に行えるよう、先輩起業家や専門家が仮想取締役となって、経営課題の議論を集中的に行うなど、そこで得た人脈は卒業後も非常に役立っているようです。
それから、社会起業塾の開催を通じ、課題となっていたのが、社会起業家の裾野を広げるためにも、そういった卵たちを育てる必要があるということに気づきまして、2009年度から『NEC次世代社会イノベータープログラム』をスタートしました。選抜されたメンバーは、実際の起業の現場で代表の右腕となって、プロジェクトを半年間担当し、成果を出すことが求められます。
メンバーは就職先が決まった大学4年生が多いのですが、半年終わってみると、プロジェクトの成果が見え始めて、仕事が面白くなってきたこともあってか、内定を断ってまで起業の現場に残ってしまうというような現象も起き始めています。

*1:コーズマーケティング
企業が社会問題や環境問題などへの積極的な取り組みを対外的にアピールすることで顧客の興味を喚起し、利益の獲得を目指すマーケティング手法。社会貢献とビジネスの両立を実現しようとする考え方。米国アメリカンエクスプレス社が展開した「自由の女神修復キャンペーン」(クレジットカード利用一回ごとに1セントが寄付になる)が元祖とされる。
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